■Z戦士が束になってかかっても「ほぼノーダメージ」という驚異のタフさ

 惑星ベジータの王子ベジータとともに地球に襲来した、サイヤ人のエリート戦士ナッパは、地球に到着後にいきなり東の都を破壊する。

 そして彼の圧倒的な強さを象徴するシーンが、ただのパンチで天津飯の左腕を吹っ飛ばした場面だ。防御すらままならないレベルの強敵に、読者目線でもこれまでの戦いとは次元が違うものになるという戦慄が走った。

 さらに餃子による命を賭した自爆攻撃もナッパにはまったく効かず、天津飯が最後の力をふり絞って放った気功砲にもほぼノーダメージ。

 餃子に続いて、天津飯まで力尽きたときの「悟空──!!!! はやくきてくれ──っ!!!!」というクリリンの悲痛な叫びは、まさに当時の読者の気持ちを代弁するものだった。

 地球を守る頼もしい戦士たちが次々死んでいくという重苦しい展開。3時間の中断を挟んで再開された戦いでは、サイヤ人の弱点を突くという攻撃も不発に終わる。

 唯一、クリリンの気円斬でナッパにかすり傷をつけたのが精一杯で、極めつけは幼い悟飯をかばってピッコロが死ぬという信じられない展開だ。

 怒りが爆発した悟飯渾身の「魔閃光」も弾き返され、ナッパの前に地球の戦士たちは、まさに万策尽きるのである。

 戦闘力の面でいえばナッパはベジータに遠く及ばないが、読者に与えた恐怖という意味ではベジータ以上だったかもしれない。悟空が到着するまでの絶望的な展開は、多くの読者を震え上がらせた。


 戦闘力の面でいえばフリーザやセル、魔人ブウのほうがはるかに上だろうが、戦闘力以上に恐怖を感じさせられた強敵は何人もいる。とくに死力を尽くして戦いながら、万策尽きたところに非情な現実を突きつけられる展開は、読者に大きな絶望をもたらしただろう。

 『ドラゴンボール』好きの皆さんは、どのようなシーンでもっとも恐怖を感じただろうか。

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