「戦闘力だけじゃ語れない」桃白白にタンバリン、Z戦士を葬ったナッパ…『ドラゴンボール』読者目線でもっとも恐怖を感じた強敵とはの画像
DVD『ドラゴンボール改 3』(ハピネット) (C)バードスタジオ/集英社・フジテレビ・東映アニメーション

 1984年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で、長期にわたって連載されていた鳥山明さんの漫画『ドラゴンボール』。地球育ちのサイヤ人・孫悟空が襲来する脅威とたびたび戦い、平和を取り戻すという展開で人気を博した。

 また作中では、戦士たちの強さを数値化する「戦闘力」という指標が生まれ、物語が進むにつれてその戦闘力の数値は飛躍的に向上していく。

 戦闘力を測るスカウターが登場したとき、重い道着を脱いだ状態の悟空の戦闘力は400程度。それからナメック星に行く前と後では、桁違いの数値に成長を遂げた。

 しかし戦闘力の大きさ以上に『ドラゴンボール』の読者に強烈な絶望感と恐怖を与えた強敵もいる。とくに多くの読者を震え上がらせた3名の強敵たちの“怖さ"について掘り下げてみたい。

※本記事には作品の内容を含みます。

■シリアス展開への突入を予感させた猛者・桃白白による恐怖

 世界一の殺し屋である桃白白(タオパイパイ)は、初登場時からこれまでの敵とは異質の強さを見せつけた。レッドリボン軍のレッド総帥に雇われた桃白白の初仕事は、任務に失敗したブルー将軍の粛清だった。

 ブルー将軍といえば超能力の使い手であり、悟空も苦戦するほどの強敵。しかし、そんなブルー将軍を、桃白白は宣言通り“舌”だけで瞬殺。アニメ版ではブルー将軍の超能力もまったく通用しなかった。

 そして桃白白がさらなるすごさを印象づけたのが、ジェット機では移動に時間がかかり過ぎるといって披露した「柱飛行」である。これは自身が投げた柱に空中で飛び乗って高速移動するという離れ業で、この常軌を逸した移動方法にド肝を抜かれた読者も多いはずだ。

 その後も桃白白は、聖地カリンを守る戦士ボラを槍で貫いてあっさり殺し、悟空との戦いも終始圧倒。かめはめ波にも耐える驚異のタフさを見せ、どどん波を食らって動けなくなった悟空の姿にも悲壮感が漂った。

 当時はエネルギー波を使った攻撃自体が珍しかったため、とんでもない強敵が現れたと思った読者も多いだろう。それまでのコミカル路線から一変し、いきなり「死」の描写が連続で飛び込んできたことで、シリアス展開へのシフトチェンジを予感させる恐ろしい敵に感じられた。

■天下一武道会の強者たちを子ども扱いした脅威

 ピッコロ大魔王の配下であるタンバリンは、クリリンの命を奪い、初めて主要キャラの死というショッキングな出来事をもたらした魔族である。

 漫画ではクリリンとタンバリンの戦闘シーンは割愛されたが、実はアニメ版では第103話「ピッコロ大魔王の恐怖!!」の回で描かれている。

 クリリンの連続攻撃を余裕で回避したタンバリンは、空中からの鋭い蹴り一発で彼を死に至らしめた。続いてタンバリンは、空腹で万全ではなかったにせよ、怒りに燃える悟空をたやすく返り討ちにしたうえ、彼の相棒ともいえる筋斗雲まで消滅させた。

 悟空の大切なものが次々と奪われていく展開に、なんとも言えない喪失感と絶望感を覚えた読者も多いのではないだろうか。その後もタンバリンは、ドラゴンのような見た目をした猛者ギランや、天空×字拳で悟空を苦しめたナムなど、天下一武道会でもおなじみの武術家を次々と手にかけていく。

 アニメ版では、天下一武道会での優勝経験がある八手拳の使い手・チャパ王や、悪臭と怪力が自慢のバクテリアンらまで葬った。

 悟空やクリリンたちのライバルだった実力者たちが子ども扱いされ、殺されるシーンは強烈なインパクトがあった。しかも、タンバリンの上の存在として、さらにピッコロ大魔王が君臨するという状況には、読者として本当に絶望的な気分にさせられたのである。

  1. 1
  2. 2
  3. 3