■『第08MS小隊』を象徴する「倍返し」と「輝き撃ち」の真実
OVA『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』では、主人公のシロー・アマダが、ジオンのベテラン軍人ノリス・パッカードと激闘を繰り広げるシーンは印象深い。
その戦いの中でシローが「倍返しだあ!!」のセリフとともに、乗機「ガンダムEz8」の火器を一斉射撃する場面を覚えている人も多いだろう。この「倍返し」のセリフのシーンは、ゲームでは「全弾発射」「一斉射撃」などの名称でシローの必殺技のような扱いをされることが多い。
しかし、アニメ劇中でシローが「倍返しだあ」と発言した場面を思い返すと、実はあのときのシローの渾身の攻撃は、ノリスのグフ・カスタムに一発も当たっていなかった。
ノリスに「見た目は派手だが……」とツッコまれ、シローにとって苦い記憶となったのが「倍返し」のシーンである。それがゲームでは必殺技のような扱いを受けているため、ゲームでシローのことを知った人は、アニメで該当シーンを見たときのギャップに驚くことだろう。
また『08小隊』にはもうひとつ、誤解されがちなシーンがある。それはオープニング映像において、主題歌『嵐の中で輝いて』が流れるなか、陸戦型ガンダムが180ミリキャノンを射撃するシーンでのこと。
地面に突き刺したシールドを銃架にして撃つ場面は、その曲名から「輝き撃ち」と呼ばれ、ミリタリー色の強い『08小隊』を象徴するシーンとして知られている。
しかし、そのシーンの映像をよく見ると、実際は陸戦型ガンダムのシールドに180ミリキャノンの砲身は乗っていないことが分かる。
この「輝き撃ち」が広まったのは、ゲーム『Gジェネレーション』シリーズなどで陸戦型ガンダムがキャノン発射時にシールドに乗せて発射していたからともいわれている。
ちなみにガンプラでも「輝き撃ち」は再現されており、2000年に発売された「MG 1/100 RX-79[G]陸戦型ガンダム」には、その射撃体勢を再現するためにシールドとキャノンをつなぐ追加パーツまで用意されたほどだ。
■可変機にそんな機能はなかったのに、なぜ?
テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』に登場した可変MS「メタス」は、レコア・ロンドやファ・ユイリィによって運用された機体だ。
リメイク作品である劇場版『機動戦士ZガンダムII 恋人たち』では、百式の「メガ・バズーカ・ランチャー」へのエネルギー供給を担当するなど、サポート機としての役割も見せている。
だが、ゲーム『スーパーロボット大戦』シリーズでは、メタスは「修理装置」を持った機体として扱われている。これは劇場版『Zガンダム』の公開よりも前のことであり、1991年発売のファミコン版『第2次スーパーロボット大戦』(バンプレスト)で、すでにメタスは修理装置を備えていた。
同作から「修理機能」のシステムが導入され、立ち位置的にメタスが選ばれただけだと思われるが、もちろんアニメ本編のメタスにそんな機能はない。
それ以降、『スーパーロボット大戦』シリーズでメタスは修理機能を持った機体として定着し、2025年に発売されたシリーズ最新作『スーパーロボット大戦Y』でもメタスは修理機能を備えている。
原作アニメにはない設定を30年以上続けてきたメタスのことを、修理機能を持った機体と誤解しているプレイヤーは案外多いのかもしれない。
『ガンダム』シリーズの歴史は長いため、ゲームをきっかけに興味を持って、あとから原作アニメを見るというケースも少なくないはず。そのときゲームでは常識だと思い込んでいたことが、実はアニメでは違うという驚きが生まれるのも、長寿コンテンツならではのギャップの面白さかもしれない。


