■すれ違いが生んだ悲しいカラオケ殺人『名探偵コナン』
大人気ミステリー漫画『名探偵コナン』(青山剛昌さん)にも、クリスマスを舞台にした悲しいエピソードがある。それが、第5巻「カラオケボックス殺人事件」だ。
鈴木園子に誘われて、有名バンド「レックス」のカラオケ打ち上げに参加した江戸川コナンと毛利蘭。しかし、3人が目の当たりにしたのは、ボーカルの木村達也がほかのバンドメンバーやマネージャーを一方的に罵倒する、険悪な雰囲気の打ち上げだった。
そんな最中、達也が何者かによって毒殺されてしまう。死因は食べ物に付着した青酸カリによる毒殺だと判明するが、誰がどう仕込んだか警察の捜査でもわからない。一時は達也の自殺すら疑われたが、コナンの名推理によって真犯人はマネージャーの寺原麻里であることが暴かれる。
昔から達也を一途に愛していた麻里は、彼のメジャーデビューをきっかけに整形手術を受け、マネージャーとして彼に相応しい女性になろうと決意した。だが、美しくなったはずの麻里をなぜか達也はなじり続け、彼女の気持ちは愛情から憎しみへと変わっていく。信じていたからこそ許せなかった気持ちが、彼女を凶行に走らせたのである。
そんな麻里に、コナンは捜査の中で見つけた真実を語る。達也はずっと前から麻里を想っており、彼女に向けたラブソング「素顔の君に伝えたい」を作るほどに愛していた。彼は、最愛の女性が自分のために顔を変えた現実を受け入れられず、その気持ちの裏返しとして辛く当たっていたのだ。
互いに想い合う男女を永遠に別つ殺人事件が、恋人たちの聖夜であるクリスマスに起こったのは、なんと皮肉なことだろう。「すれちがいが生んだ悲しい結末…」と語るコナンの言葉が、あまりにも重く響くエピソードだった。
「クリスマスは楽しいもの」というのは、多くの人が抱くイメージだろう。そのイメージと真逆な「後味の悪いクリスマス」は、アニメや漫画のフィクションだからこそ観る者の胸に強く残るのかもしれない。
今回紹介したようなクリスマスを現実で過ごすことがないよう、サンタクロースにお願いしたいものである。


