『ちびまる子ちゃん』『巨人の星』『名探偵コナン』にも…楽しいとは限らない!?アニメや漫画の悲惨すぎた「後味悪いクリスマス回」の画像
DVD『巨人の星』コンプリートBOX Vol.1(ワーナー・ホーム・ビデオ)(C)梶原一騎・川崎のぼる/講談社・TMS

 今年もクリスマスの季節がやってきた。煌びやかなイルミネーションや豪華なパーティー、子どもたちにはサンタクロース……と、多くの人が年に1度の明るく楽しい雰囲気を楽しんでいることだろう。

 だが、クリスマスが必ずしも楽しいイベントとは限らないのは、現実も漫画やアニメなどフィクションの世界でも同じだ。退屈どころか「最悪」としか言いようのない、悲惨なクリスマスを過ごすキャラクターを描いたエピソードも存在する。そして、そういう話ほど、かえって印象に残りやすかったりするものだ。

 おめでたいクリスマスに水を差すようで悪いが、今回は漫画やアニメで描かれた「後味の悪いクリスマス回」を厳選して紹介していこう。

※本記事には各作品の内容を含みます

■子どもの夢を打ち砕く? 町内の残念なクリスマス会『ちびまる子ちゃん』

 さくらももこさんが描いた国民的漫画『ちびまる子ちゃん』には、子どもの視点から見たクリスマスの「がっかり感」を描いたエピソードがある。それが「まるちゃん町内のクリスマス会に参加する」の巻だ。

 町内のクリスマス会に参加することになった、“まる子”ことさくらももこ。町内の催しを「しょーもない」と考えるまる子だが、ご近所付き合いもあるため、渋々町はずれの神社まで足を運ぶ。そこで待っていたのは小規模な町内会ならではの、手作り感あふれる、しかしどこかぐだぐだなクリスマス会だった。

 クリスマス会場となる神社の社務所はとにかく狭く、子どもたちは体育座りでぎゅうぎゅう詰め。出し物の劇はまさかの全員参加型なので、出番が来た子どもは観客席から慌ただしく舞台に上がり、演じ終わるとまた席へと戻るせわしなさだ。

 そして、会のクライマックスには満を持してサンタクロースが現れるが、大人も子どもも顔見知りな町内会のため、その正体が「みまつやのおやじ」と即座にバレてしまう一幕も。

 トドメは、最後にもらったお土産の箱の中身が、クリスマス感ゼロの紅白まんじゅうだったことだ。後日フタをあけたまる子は、大層ガッカリしたそうだ。

 子どもにとってクリスマスは夢のある楽しみなイベントだと考えがちだが、肝心の催しがイマイチでは、現実を突きつけられてむしろ興ざめしてしまう。子ども向けのクリスマス会を大人として企画する際は、ちゃんと楽しんでもらえるようがんばりたいと思う次第だ。

■「野球ロボット」から抜け出したい飛雄馬の孤独が刺さる『巨人の星』

 次に紹介するのは、『巨人の星』(原作:梶原一騎さん、作画:川崎のぼるさん)のアニメオリジナルエピソードとして特に有名な、主人公・星飛雄馬のクリスマスを紹介しよう。

 アニメ第92話「折り合わぬ契約」にて、飛雄馬は球団との契約更改がまとまらないまま年末を迎えていた。そこで、もうすぐクリスマスであることを思い出す。

 ポイントは、第90話で彼が好敵手のアームストロング・オズマから「お前は野球をやるだけの野球ロボットだ」と揶揄され、ひどく動揺していた点だ。自分がロボットではないと信じたい飛雄馬は、その言葉を払拭したい一心で人間らしい温かさを求め、家族やライバルを招いたクリスマスパーティーを企画する。楽しいひとときを過ごすことで、自分がロボットではないと証明しようとしたのだ。

 だが、結果は悲惨なものだった。飛雄馬がワクワクしながら準備したパーティーには、花形満や左門豊作といったライバルはおろか、姉の明子すら現れない。唯一の親友の伴宙太からは、事情があったとはいえ「何がクリスマスじゃあい!」と電話口で怒鳴りつけられる始末。

 そこに追い打ちをかけるようにオズマの幻影が現れ、“お前が野球ロボットだから誰も来なかったんだ”と、飛雄馬を罵る。これに激昂した飛雄馬は泣きながらパーティー会場をめちゃめちゃに破壊してしまうのだ。実際にはこの場にいないライバルの幻影を見てしまうという描写が、彼の精神的な苦痛を痛いほどに表現しており、非常に辛い。

 クリスマスパーティーという普通の若者らしい青春を一切謳歌できない自分は、本当に野球ロボットではないか——。野球に全てを費やしてきた飛雄馬の孤独な苦悩が胸に刺さる、悲しくも忘れられないエピソードだ。

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