ガンダムシリーズの主人公たちは、パイロットとして高い適性を持ったキャラクターが多いことは周知の事実だろう。物語冒頭では操縦経験がなかったとしても、物語が進むにつれて、目覚ましい成長を遂げていくのも見どころのひとつである。
しかし、ガンダム主人公の中には、モビルスーツパイロットとしての優れた素質だけでなく、特別な才能や技能を有している者も少なくない。
たとえば『新機動戦記ガンダムW』の「トロワ・バートン」は、工作員としてとてつもない身体能力を持ち、作中ではサーカス団に入って潜伏していた。
そこで今回は歴代シリーズのガンダム主人公たちのMS操縦技術以外の特別な技能や才能に着目しながら振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■もはや趣味の域を超えた「機械いじり」の才能
テレビアニメ『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイは、ガンダムの開発者である地球連邦軍技術士官のテム・レイを父親に持ち、その影響もあってか機械いじりやコンピューターが好きな少年として描かれている。
その腕前は趣味の域を超え、市販品のペットロボット「ハロ」に独自の改造を施していたほど。一年戦争後、ホワイトベース隊のマスコット的な扱いだったアムロが改造したハロの人気が高まり、本来の開発元である「SUN社」が逆ライセンス生産という形でアムロモデルのハロを商品化したという設定まで生まれた。
さらに劇中でもアムロは、驚くべき芸当を披露している。第14話「時間よ、とまれ」の回で、ジオン兵によってガンダムに時限爆弾が仕掛けられてしまい、それをアムロ自身が手作業で取り外していく場面が描かれたのである。
ホワイトベースには技術士官候補生のオムル・ハングをはじめ、本職の技術者がいたにもかかわらず、艦長のブライト・ノアはアムロに爆弾解除を任せている。そしてアムロは見事にその危険な任務をやり遂げ、彼の勇気と才能を感じたシーンだった。
またアムロは後年、最後の乗機となった「νガンダム」の基礎設計も担当しており、その運用テストに立ち会った連邦高官や技術者が、完成度の高さに衝撃を受けたともいわれている。
もしもアムロがMSパイロットになっていなかったら、父テム・レイと同じく優秀なエンジニアとして名を成していたかもしれない。
■実は多才だった「史上最高のニュータイプ」
テレビアニメ『機動戦士Zガンダム』の主人公カミーユ・ビダンは、「史上最高のニュータイプ」とも呼ばれ、その類まれなるニュータイプ能力に注目が集まりがち。しかし、そんな彼もさまざまな特別な技能・才能を有していた。
書籍『データガンダム キャラクター列伝 宇宙世紀編II』(角川コミックス・エース)によるとカミーユの学業は優秀で、アムロと同じく技術士官の親譲りの工学的才能を持っている。
MS工学の第一人者だった父親のパソコンから「ガンダムMK-II」のデータをこっそり盗み、設計や操縦にも詳しくなったという。
そんなカミーユは、ハイスクール時代に「ホモ・アビス」と呼ばれる体に取り付ける小型飛行機の大会で二年連続優勝という偉業を達成。さらにジュニアモビルスーツの大会でも優勝を果たしている。
またカミーユには空手の心得もあり、劇場版『機動戦士Zガンダム 星を継ぐ者』では、モビルスーツ戦で回し蹴りを披露するなど、意外な活用法を見せていた。
親譲りの工学知識にモータースポーツ的な大会での目覚ましい活躍、さらに格闘技と、カミーユはガンダム主人公の中でもとくに多才だった人物といえるだろう。


