“11人同時手術”に“鏡を見ながら自身を開腹”!? 『ブラック・ジャック』BJが施した「前代未聞の手術方法」の画像
少年チャンピオン・コミックス『ブラック・ジャック』第5巻 (秋田書店)

 手塚治虫さんの不朽の名作『ブラック・ジャック』は、天才的な腕を持つ主人公の外科医、ブラック・ジャック(以下BJ)が、現代の医療技術でも難しいであろう手術を次々と成功させ、さまざまな事件やトラブルなどを解決していくストーリーだ。

 作中、BJは数々の神業的な手術を披露するが、その最たる例が、彼の助手であるピノコを造り上げたことだろう。ピノコは元々、双子の姉の体内に生じた「畸形嚢腫(きけいのうしゅ)」であったが、BJがそこから脳や手足、内臓を摘出して1人の人間に組み立てたのだ。

 このようにピノコの存在自体が医学の常識を超えているが、作中にはさらに常軌を逸した「前代未聞の手術」が数多く描かれている。今回はその中から、特に印象深い4つの手術を紹介したい。

 

※本記事には作品の内容を含みます

■何も見えない中での開胸手術「病院ジャック」

 BJは手術の腕だけでなく、記憶力も天才的だ。それが分かるのが「病院ジャック」のエピソードである。

 ある病院にて腸重積症の手術を執刀していたBJ。しかし、その手術中にテロリストが病院を占拠し、手術の中止を要求する。緊迫した状況下で時間だけが過ぎていく中、助手たちはBJに指示を仰ぐも、彼はその場に立ちつくし微動だにしない。

 やがてテロリストたちは病院の電源を爆破し、手術室は完全な暗闇に包まれてしまう。患者は胸を開いた状態であり、このままでは死を免れない絶体絶命の状況に陥った。

 だが、その直後BJは、暗闇の中で患者の手術を再開する。彼が微動だにしなかったのは、万が一に備えて患部を完璧に記憶し、見えなくても手術ができるよう準備していたのだった。

 BJは暗闇の中、「イレウス管」「縫合針」などと冷静に指示を出し、指先の感覚と驚異的な記憶力だけで手術を完遂してしまう。視覚の情報なしに複雑な手術を成し遂げるその手技は、もはや人間業ではないだろう。

■手術室に11人!? BJ流のナデ斬り法手術「流れ作業」

 BJは、1度に複数の患者をまるで工場のライン作業のように手術していく離れ業も見せている。その驚くべきエピソードが「流れ作業」だ。

 福禄病院の院長は、利益優先の経営方針を掲げ、1日に100人以上の患者をろくに問診もしないまま、流れ作業のように捌いていた。そんなある日、自身の娘が交通事故に遭い、BJに依頼が舞い込む。病院には相変わらず大勢の患者が溢れており、その現場に立ったBJは手術が必要な患者をみんな手術室に集めさせ、たった1人で次々に手術をおこなうのであった。

 普通の医師ならさじを投げるような状況であるが、BJは患者全員を第一手術室に集めさせ、「これは私流のナデ斬り法なんだ」と対応していく。そこに描かれている患者は、なんと全部で11人ほど。

 BJはベッドからベッドへと素早く移動しながら、驚異的なスピードと正確さでメスを振るう。通常ではありえない神業手術だが、BJはそのすべてを完璧に遂行。そして、最後にはさりげなく院長の娘も手術し、人知れず去っていくのであった。

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