■『WORST』の最強ポジションは?

 一方、『WORST』で最強ポジションとなっているのが花木九里虎――通称グリコだ。

 明るく女好きな性格とは裏腹に、戦えばまさに化け物。特筆すべきは“消えるケリ”とも形容される素早いキックで、敵をまとめて吹っ飛ばす描写は読者の印象に深く残っていることだろう。シリーズ屈指のフィジカルの持ち主で、その気になれば数人を一瞬で沈めるパワーとスピードを兼ね備える。

 巷では、過去に作者が「キーコとグリコが同じくらいの強さ」と発言したという話もあり、その場合は『クローズ』に比べて『WORST』のレベルが大幅に下がったと感じる読者もいるかもしれない。しかし、この話が事実だとしても、あくまでグリコが1年生の時の話ではないだろうか。

 2年時のグリコも3年時の花澤三郎(ゼットン)に辛勝したレベルで、1年時のゼットンは春道による強さランキングに入っていなかった。

 しかし、グリコの著しい成長ぶりは、現在連載中の『WORST外伝 グリコ』を見れば明らかだ。本作はグリコの中学時代を描くスピンオフで、第32巻からは舞台が3年後に。3代目「博多邪魔」、4代目「鍛冶屋一火」、「萬侍帝国」九州支部による三竦みに修学旅行中の鈴蘭勢が乱入し、バトルロイヤルでの最強争いが繰り広げられているのだが、以前と比べてキャラのレベルが段違いにアップしている。

 本作での注目ポイントは、3年時の神戸好克(ブッチャー)と萬侍帝国・九州支部の頭がほぼ同格として描かれていること。ブッチャーは鈴蘭の顔役ではあるが、グリコのほうが実力は上である。つまり、グリコは少なくとも萬侍帝国・支部の頭クラスは圧倒できるということになるだろう。

 そして、九州支部の頭よりも強い萬侍帝国メンバーがいることが示唆されているが、この世代には『WORST』時代の“日本不良界最強の男”と評される、三代目九頭神會會長のビスコこと蛭子幸一がいるはず。

 ビスコとグリコはともに『WORST』の主人公・月島花に辛勝していることから、ビスコとグリコ、さらにビスコと竜男の力関係がわかれば、誰が最強なのかという答えに近づきそうだ。

 しかし、もちろん作中でそれは語られていない。読者がそれぞれの想像でしか語ることができない部分ではあるが、ビスコが竜男に圧勝するイメージはわきにくいのではないだろうか。

 『WORST』の中では「鈴蘭史上最強」と称されるグリコだが、萬侍帝国を指標にするのであれば、やはりリンダマンと春道のワン・ツーは揺るがないのかもしれない。ただ、今後の外伝の展開次第で、グリコが最強候補に浮上する可能性もありそうだ。

 

 時代を超えて読者を魅了してきた最強議論。外伝や続編で新たな強キャラが登場すれば、よりいっそう盛り上がることになるだろう。これからも広がっていく『クローズ』『WORST』の世界から目が離せない。

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