■欲望の果ての末路『飯降山(いぶりやま)』
『飯降山』のエピソードは3人の尼僧たちを巡る、人の欲望の恐ろしさを描いた話である。
その昔、山で修行する3人の尼僧たちがいた。彼女たちは厳しい生活を送り、毎日のように食べ物に困っていた。
しかしある日、天から3人分のおにぎりが降ってくる。最初はそのおにぎりを仲良く分け合い食べていた3人だが、徐々に“もっとおにぎりが食べたい”と考えた尼僧2人が結託し、最年少の尼僧を殺してしまう。
しかし、その日からおにぎりは2つしか降ってこなくなった。すると今度は、最年長の尼僧はもう1人の尼僧を崖から突き落とし、2つのおにぎりを独占しようとした。だが、それ以来おにぎりが天から降ることはなくなり、残された尼僧は1人、山を徘徊するのであった。
尼僧といえば、厳しい戒律を守り、嘘偽りのない清廉潔白な姿を思い浮かべるだろう。しかし、そんな彼女たちも目の前に欲望を与えられた途端、強欲な人間と化してしまうのだ。最初は和気あいあいと修行をしていた可愛らしい尼僧たちが、最後は山姥(やまんば)のような形相になってしまうのも非常に恐ろしい。
しかし、おにぎりさえ降ってこなければ、3人の尼僧たちは助け合いながらその後も修行を続けていたのかもしれない……そう考えると、なんとも救われない気持ちになるエピソードである。
『まんが日本昔ばなし』の特筆すべき点は、こうした理不尽さや残酷さをオブラートに包まず、ありのままに淡々と描いているところにあるだろう。自らの行動が招く結果を直視し、後悔しないためにも『まんが日本昔ばなし』は、今なお多くの学びを与えてくれるのだ。
先日、『まんが日本昔ばなし』の公式YouTubeチャンネルが開設され、懐かしの作品が現在無料公開中だ。ぜひこの機会に、名作の数々を見てみてはいかがだろうか。


