昭和のアニメ史に輝くロボットアニメの金字塔『超時空要塞マクロス』(1982年)は、「バルキリー(可変戦闘機)」「歌」「三角関係」という、のちのシリーズの核となる要素を生み出しました。
とくに優柔不断な主人公・一条輝、年上の軍人・早瀬未沙、アイドル歌手のリン・ミンメイによる三角関係は多くの視聴者の注目を集め、昭和のアニメ好き女子たちにも大きな波紋を広げます。
放送当時、ミンメイと同世代で複雑な感情を抱いた筆者が、数十年の時を経てから感じたヒロインたちへの感情の変化などを振り返ります。
※本記事には、作品の核心部分の内容も含みます。
■メカよりも恋愛事情に衝撃を受けた異例のロボットアニメ
テレビアニメ『超時空要塞マクロス』は、1982年(昭和57年)10月3日からTBS系列で放送開始。同日に放送された1、2話を除き、日曜午後2時という異例の時間帯に放送されました。
在宅率の低い時間帯の放送のために視聴率は振るわず。また80年代初頭は家庭用ビデオデッキが出始めた頃でまだ普及しておらず、日曜の午後にテレビの前で待機せざるを得ませんでした。
個人的にはアニメ雑誌に掲載された美樹本晴彦さんの描いた『マクロス』のキャラクター設定画に惹かれ、放送前から注目していました。特に女性目線からも女の子たちがかわいく、オペレーターの3人娘のような脇役にまで華があったのです。
おそらく多くのロボットアニメ好きはバルキリーの鮮やかな変形シーンや、迫力の戦闘シーンなどに注目したと思いますが、当時のアニメ好き女子としては、パイロットの少年とアイドルがシリアスな戦いの中で育む、新しい恋愛の描き方に衝撃を受けます。
それまでの昭和ロボットアニメでは、悲劇的な結末(戦死)や命がけの恋愛描写が多かったのに対し、一条輝とリン・ミンメイの関係は違いました。
第2話「カウント・ダウン」で輝に窮地を救われながら、お礼もそこそこに「命より髪の毛が大事」と笑うミンメイは、当時の視聴者にとって珍しいタイプのヒロインでした。
さらに第4話「リン・ミンメイ」で、ミンメイは隔離空間に閉じ込められた際に死を覚悟し、輝と結婚式の真似事をして誓いの口づけをする寸前で救助。するとミンメイは、輝を放り出して家族のもとに行って談笑するのです。
このときのナレーションは「輝にとって信じられないことは、ミンメイの態度の急変だった。リン・ミンメイ、一体どんな子なのであろう」と、まさに視聴者の心情を代弁します。
『はいからさんが通る』や『キャンディ・キャンディ』など、昭和少女漫画の“一途な恋愛”に見慣れていた私は、ミンメイと輝の関係に肩透かしを食らってしまったのです。


