■「毎回『親と子の愛』がテーマとしてあるなと」

――青木さんとの掛け合いで印象的だったことはありますか?

染谷 先ほども少しお話ししましたが、細田監督から「もっと大きくやってほしい」ということを求められていたので、青木さんはテイクを重ねるごとに、本当に体が何倍にも大きくなっているような表現をされていたんです。声を聴いているだけで、完全に「ローゼンクランツ」そのものだったので、自分も頑張って追いついていこうという気持ちでやっていました。

――「生きるとは?」「愛とは?」などのほかに、アムレットとスカーレットの「親と子、それぞれの思い」や「親子の愛」も描かれていましたが、その点で染谷さんがこの作品から考えたことはありますか?

染谷 細田さんの作品は、毎回「親と子の愛」がテーマとしてあるなと思っています。中でも今作は、母親からの愛情を受けず、父親を理不尽に奪われたスカーレットが、その後も過酷な状況に身を置くことになるのですが……。

――父を失い、復讐に失敗したスカーレットが目覚めますと、そこは暴力が支配し、力なき者が「虚無」となる世界「死者の国」でした。

染谷 その中に投げ込まれてからも、何度もくじけそうになったり「もう嫌だ」と諦めそうになったりしながらも、その世界の中で成長して生き抜いていく姿に心を動かされました。

「父の仇を取る」という復讐心だけで何とか立っていられる、といった精神状態の中でも、きっと彼女の中にある父親への愛情が動機となって、あそこまでのエネルギーを持っているんでしょうね。改めて「親と子の愛」というのは、本当に普遍的なことなんだということを、今作からも感じました。

――では、染谷さん的「果てしなきスカーレット」のイチ押しポイントを教えてください。

染谷 「染谷さん的」ですか(笑)。そうですね……。主人公と一緒に冒険できて、エンターテインメントとしてすごく楽しめるところと、ある種、ファンタジー的な世界観なのだけど、自分もその当事者の一人のように感じられるところです。とても説得力があって、今を生きる自分たちにも直接関わりのあるメッセージが込められていると思います。

 映像ももちろんですが、音楽をはじめとする「音」も良くて、この映画のために作られた楽器もあるそうなんです。どうやらその楽器は、人類が出せる最大の低音を出しているらしいので、映画館のスクリーンとスピーカーでしか味わえない音響効果だと思います。そこも含めて、ぜひ劇場で見ていただきたいです。

取材・文/根津香菜子

染谷将太(そめたに・しょうた)
1992年⽣まれ、東京都出⾝。⼦役としてキャリアをスタートし『パンドラの匣 』(09)で映画初主演。2011年に主演をつとめた『ヒミズ』では、第68回ヴェネチア国際 映画祭で⽇本⼈初となるマルチェロ・マストロヤンニ賞を受賞。近年の主な出演映画に『劇場版ドクターX FINAL』、『はたらく細胞』、『聖☆おにいさんTHE MOVIE〜ホーリーメンVS 悪魔軍団〜』、『BAUS 映画から船出した映画館』、劇場アニメ『ひゃくえむ。』(声の出演)などがある他、現在放送中のNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」、「シナントロープ」(テレビ東京系)、「イクサガミ」(Netflixシリーズ配信)に出演。

《作品概要》
『果てしなきスカーレット』
2025年11月21日(金)より全国公開中
監督・原作・脚本:細田守
芦田愛菜、岡田将生、山路和弘柄本時生、青木崇高、染谷将太、白山乃愛、白石加代子、吉田鋼太郎斉藤由貴松重豊市村正親、役所広司ら声の出演。
配給:東宝、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
公式サイト https://scarlet-movie.jp/

 

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