名曲『カエルのテーマ』の“孤高感”がしみる…私が耳を奪われた「最高のゲーム音楽」たち【宇内梨沙「ひねもすぬまりぬまりかな」】の画像
宇内梨沙

【連載】宇内梨沙「ひねもすぬまりぬまりかな」第9回

 

 前回に引き続き、今回のテーマも「ゲーム音楽」です。

 私が好きなゲーム音楽は、やはり「物語のあるゲーム」の楽曲です。物語とプレイヤーの心情とシンクロするように作られた楽曲たちは、他ジャンルのゲームとは記憶の残り方が違うように思うのです。

 ということで、『FF』シリーズに続いてご紹介するのは、大傑作『クロノ・トリガー』の曲。そういえば先日、YouTube番組で堀井雄二さんが『クロノ・トリガー』のリメイクについて問われた際に、「言えない! 聞かないで! 怒られる」と答えたことが話題となりました。

 発売されてから30年が経ってもなお語られる作品――『クロノ・トリガー』を今の技術でリメイクしてほしいとは誰もが思っているでしょう。そして、好きなゲーム音楽で『クロノ・トリガー』の名を挙げる方も非常に多いと思います。それほど名曲揃いです。

 私が『クロノ・トリガー』をプレイしたのは、実は発売されてからずっと後の、2010年代。昔のゲームが、続々とスマートフォンなどに移植され始めた時期です。

 当時大学生だった私は、往復4時間かかる通学時間で、iOS版をプレイしました。ただ、『クロノ・トリガー』の音楽は子どもの頃からよく聴いていました。

 『クロノ・トリガー』を大好きな兄が、サントラを購入し、母親の車でずっとかけていたのです。ですから私も浴びるように聞きました。

 中でも私が一番好きな楽曲は『クロノ・トリガー』。タイトル画面で流れる曲で、これから時を超える旅へと向かう高揚感、冒険感にあふれた名曲です。ゲームを起動させるたびに、時計の振り子が時を刻み、この曲が流れ、心躍りました。

 あとは『カエルのテーマ』ですね。過去を乗り越える、勇敢で誇り高き騎士カエルが一番好きなキャラクターでした。この曲は主旋律がとても高音で、そのキーの高さがカエルの孤高さを表しているようにも感じます。

 他にも『風の憧憬』や『時の回廊』など名曲揃い。ナンバーワンを決めるのも難しい、音楽的にも素晴らしい作品でした。

 ちなみに、『クロノ・トリガー』は発売30周年を迎え、2026年の1月にコンサートが行われます。

 その知らせを見て即応募。見事当選したので、『クロノ・トリガー』が大好きな兄を誘って参戦します。

 私が浪人生だった頃、第一志望の結果が出る前に、すべり止めで受けた大学の入学金の振り込み期限が迫っていました。そのとき、入学金を支払ってくれたのが、すでに社会人だった兄。その時のお礼をまだできていなかったから、このコンサートチケットはお礼です。入学金は確か20万円だったので、釣り合っていませんが……(笑)。

 さて、続いては今年一番聞いたゲーム音楽! それはもちろん『デス・ストランディング2:ON THE BEACH』です。

 ここ数年で、最も心に響いた作品は間違いなく『デススト2』。作品の意義については、以前この連載でも触れましたが、『デススト』シリーズは、音楽もとてもとてもリッチな作品です。

 『デススト2』では、プレイヤーのゲーム体験がより主体的で没入感のあるものにするため、音楽においても「ある仕掛け」が施されています。オープニングで流れるウッドキッドさんの『Minus Sixty One』は、まさにその仕掛けが感じられます。

 走ればドラムロールが鳴り、止まれば静かになり、進むルートによってメロディやリズムが変わる――。そんなふうにプレイヤーの行動と音が連動し、リアルタイムに音楽が変化します。

 サムが自宅に帰るというのが最初のミッションなんですが、正しいルートを取り、進めば進むほど、音楽は壮大なものとなり、プレイを開始してほんの数分で、『デススト2』の世界に没入させられます。

 そして、物語を全て体験してからエンディングで聴くウッドキッドさんの『To The Wilder』も格別。命とは、生きるとは、愛とは、地球とは……いろいろな思いが心を駆け巡り、涙が止まりませんでした。

 他にも三浦大知さんの『Polytope』は何度も聴きました。

 この曲は、サムの相棒となるドールマンの悲しい過去が明らかになる際に流れる音楽。悲しくも美しく、途方に暮れる中でも再び立ち上がるドールマンの強さを表しているようで、絶望の中でも希望を見出すシーンとのシンクロが素晴らしく、大好きな曲です。

 そんな『デススト2』も、2026年2月にコンサートが行われます。もちろんチケットは購入しています。出演者にはオーケストラだけでなく、歌手の方もいらっしゃるので、どんな楽曲が歌われるのかとても楽しみです。

  1. 1
  2. 2
  3. 3