テレビ朝日系列で放送されている特撮ヒーロー番組「スーパー戦隊シリーズ」は、現在放送中の『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』を最後に“長期休止”することが正式に発表された。
同シリーズは『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975年)から半世紀続き、仮面ライダーやウルトラマンと並んで昭和から愛され続けた特撮番組だ。
作中ではヒーローたちの輝かしい活躍だけでなく、魅力的な敵役も多く、なかでも『魔進戦隊キラメイジャー』(2020年)のヨドンナ、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022年)のソノニやソノゴといった女性ヴィラン(悪役)の人気が高い。
しかし『超力戦隊オーレンジャー』(1995年)以降、「素顔を出した敵幹部」が激減し、『王様戦隊キングオージャー』(2023年)のように「怪人態(スーツ)」だけの敵組織も見受けられる。
一方、昭和のスーパー戦隊では素顔をさらす敵幹部が主流であり、特に女幹部は恐ろしげなメイクや派手なコスチュームに包まれていたが、その素顔は美人ぞろいだった。
そこで今回は懐かしの昭和のスーパー戦隊シリーズから、同性である筆者が魅了されたインパクトあふれる女幹部たちを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■昭和特撮史に刻まれた強烈な個性・ヘドリアン女王
昭和の特撮作品の女幹部として、多くの人が真っ先に思い出すのが、第4作『電子戦隊デンジマン』(1980年)に登場した「ヘドリアン女王」ではないだろうか。異次元人ベーダー一族の指導者である彼女は、半世紀にわたるスーパー戦隊シリーズの中で強烈なインパクトを与え、絶大な人気を誇る。
演じたのは、昭和の特撮作品で魔女や女帝といった役の第一人者であった曽我町子さん。
最終回で全同胞を失って孤独になった女王は、デンジマンに「勝ったと思うなよ」と捨て台詞を残し、姿を消した。
しかし翌週、次回作『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)が放送開始すると、北極の氷の中で眠っていたヘドリアン女王は、同作の敵・機械帝国ブラックマグマに第4話でメカ心臓を埋め込まれ、再び女幹部として復活を遂げる。
そして終盤はヘルサターン総統を倒して機械帝国の頂点に立つも、腹心まで疑うようになり、弱りきったメカ心臓の交換も拒否。最後はヘルサターンの亡霊に苦しみながら、メカ心臓が耐え切れずに死亡するのである。
つまりヘドリアン女王は、スーパー戦隊シリーズで唯一の「2作品連続でレギュラー出演した敵キャラ」であり、「二度とも正義側に倒されなかった」という稀有な女幹部だ。
『デンジマン』でのヘドリアン女王といえば、頭部の巨大なツノと胸元が大胆に開いたセクシーな衣装が印象的。これはマーベル社の作品『マイティ・ソー』に登場する悪役「死を司る女神ヘラ」を流用したもの。
この時期、東映はマーベル社とのコラボ特撮作品『スパイダーマン』(1978年)を制作していた関係で、マーベルのキャラクターを期間限定で使用できるという契約を結んでいたことで実現した。
『デンジマン』ではセクシーかつかっこよかったヘドリアン女王だが、『サンバルカン』での復活時はミラーボールのような個性的な頭部になっていて驚いた。だが、恐ろしさの中にキュートさを内包する曽我さんの怪演によって、どちらも魅力的な唯一無二の女幹部となった。いまも忘れられない存在である。
ちなみに『デンジマン』で女王に仕えていた、金色のコスチュームを着たミラー役の美川利恵さんは元ミス日本、銀色のケラー役・湖条千秋さんは元宝塚ジェンヌという経歴の持ち主で、どちらもスタイル抜群な美女だった。
■昭和の子どももビックリ! 麗しの美女は男の声!? 副官シーマ
第9作『電撃戦隊チェンジマン』(1985年)に登場した副官シーマは美しい女性だが、彼女の口から発せられる声は“男性風"という異色の女幹部だった。
シーマを演じたのは藤枝かなさんで、男性風の声は『宇宙刑事ギャバン』(1982年)でハンターキラーを演じた飯田道朗さんが担当している。
大星団ゴズマでギルーク司令官の副官として指揮を執り、戦闘時には電磁ムチ「シーバー」を武器で戦うシーマは、元アマンガ星の王女である。
母星復興のためにゴズマの首領・星王バズーに服従し、赤ん坊のころから宇宙獣士ウーバに育てられ、親の愛情を知らずに育った。その生い立ちもあって一見冷酷そうなシーマだが、意外とかわいい面が多く、ゴズマの大スターである宇宙獣士ボルタに会った際には失神するほど興奮し、同じ副官であるブーバに呆れられた。
次第にゴズマへの忠誠心が揺らぎ始めたシーマは、女王アハメスらの策略によって捨て駒にされ、チェンジマンともども抹殺されかける。
だが、第52話でブーバの活人剣によって仮死状態に。やがて目を覚ましたシーマは、チェンジドラゴンに敗れて瀕死のブーバに生かしてくれた礼を言うと、「いや、お前は死んだんだ。そして生まれ変わったんだ。きれいだぜ、やっぱりお前はお姫様だ」と告げられ、感謝の涙を流すのである。
そしてブーバの死後、シーマはチェンジマン側に立つなど、作中では重要な役回りを担う女幹部として描かれた。不遇な生い立ちながら、隠しきれない愛らしさを持っていた女幹部シーマに魅了されたファンは多いだろう。
ちなみにシーマを陥れた女王アハメスを演じた黒田福美さんは、TBS系列で放送されていたクイズ番組『世界ふしぎ発見』の初代“ミステリーハンター”である。


