■『ヒロアカ』や『Dr.STONE』にも…
『僕のヒーローアカデミア』では、アメリカNo.1ヒーローのスターアンドストライプが鮮烈な最期を迎える。敬愛するオールマイトの頼みに応じて来日した彼女は、日本上空で死柄木弔と激突。触れた後で名前を呼ぶとその対象に新たなルールを設定できるチート個性「新秩序(ニューオーダー)」をもってしても、死柄木に決定打を与えることができない。
しかし、死柄木の「崩壊」によって敗北寸前となり個性を奪われそうになる直前、彼女は「“新秩序”は他の“個性”と反発する」というルールを追加する。これにより、個性を奪った死柄木を弱体化させ、能力の死守にも成功した。もしここで「新秩序」が敵側の手に渡っていたら、後の最終決戦におけるヒーロー側の勝算は著しく低くなっていたはずだ。
『Dr.STONE』では、主人公・石神千空の父親(養父)である石神百夜が、1000年単位のスケールで未来へ影響を残す。全人類が石化したその瞬間、宇宙にいた百夜は奇跡的に生存。帰還後、生き残ったわずかな仲間とともに「百物語」を語り継ぎ、いずれ復活する千空たちへ向けて希望、知識、文化を物語という形で残していく。
また、科学文明を再生するうえで欠かせないプラチナをかき集め、後世へ引き渡すこともしてくれた。最後の瞬間までプラチナ探しを続けていた百夜の姿は非常に印象的だ。決して派手な散り際を見せたわけではないが、千空が新世界で科学王国を築くうえで、彼の活躍は“縁の下の英雄”と呼ぶにふさわしいものだった。
今回取り上げたキャラクターたちの最期は、単なる脇役の“死亡イベント”ではない。それはすべてをかけて物語を動かし、未来を救うという『少年ジャンプ』作品の王道的な美学を体現している。命をかけた一手が世界を変え、主人公たちが進む道を照らし、読者に強烈なインパクトを与える──「友情」と「努力」だけでは導けなかった、尊い犠牲の上に成り立つ「勝利」がそこにはあるのだ。


