今、老若男女を問わず大人気で2025年11月24日にアニメ映画『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が2026年夏に公開されることが発表された『ちいかわ』。「自分ツッコミくま」などで知られるイラストレーター・ナガノさんが2020年にXに投稿した連載から生まれた、明るくて素直な小さくてかわいい生き物たちの日常を描いた漫画作品が原作。失敗することも多いが、毎日を必死に生きている「ちいかわ」、その友人で、言葉が話せて明るくて素直な性格の「ハチワレ」、破天荒だけど実は優秀(?)なうさぎたちが活躍する。正式名称は『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』だ。
現在8巻まで発売されているコミックスは累計発行部数460万部を突破。2022年からは『めざましテレビ』(フジテレビ系)内でアニメ版の放送がスタートしている。
今回発表されたアニメ映画は、原作者であるナガノさんが脚本を担当し、「特別な島へご招待」と書かれた招待状を手にしたちいかわ、ハチワレ、うさぎがラッコを伴ってとある島へ向かうという話。ファンの間では「セイレーン編」や「島編」と呼ばれる、2023年3月から11月にかけてXに投稿されていた長編シリーズだ。
映画化される「セイレーン編」は、随所から業の深さを感じる、考えれば考えるほど重くて後味の悪いストーリーが印象的。愛らしい『ちいかわ』の姿しか知らないライト層はそのストーリーの重さにびっくりするかもしれない。
実は『ちいかわ』には、これまでにも「セイレーン編」に類する長編のダークな話がある。今回は、映画に先駆けてこれまでの『ちいかわ』のダークな物語を振り返りたい。
■続きが気になって仕方がない「石編」
まずは現在アニメで放送されている通称「拾魔(ひろま)編」。ファンの間では「石編」
などとも呼ばれている。
これはある日うさぎがちいかわとハチワレにきれいな石を渡すところから物語が始まる。謎の石の力に導かれてか、二人がうさぎの足跡に導かれて辿り着いたのは古い旅館のような場所。そこでは多くのモブキャラたちが、大きな石を削って、二人がもらったようなお土産石を作っているようだ。
しかしこの後、状況が一変。なんとうさぎが石に変えられてしまう。元凶である蛇の置物を壊そうとする二人だが、蛇は目から光線を出し、ハチワレも石にされてしまう。絶体絶命のピンチに立ち向かう、一人残ったちいかわは……? という、ハラハラするストーリーだ。ナガノさんの漫画は基本的に1枚の読み切り形式なので、リアルタイムの読者はこの期間、続きが気になって仕方ない日々を過ごしていた。
ちいかわたちが操られる恐怖、石にされる恐怖と、普段の穏やかなちいかわの世界からはかけ離れたハードな長編だが、よく考えると最も恐ろしいのは、みんなが削っていたのは元々命のあった仲間が石にされた姿だと仄めかされている点。ちいかわの世界では、決定的な描写こそないものの、討伐などでモブキャラが命を落としたと見られる描写がなされることもあるが、石にされてトンカチで削られる(しかも、洗脳されたちいかわたちもその石を削るシーンがある)というのはなんともむごたらしい。


