尾田栄一郎氏による大人気漫画『ONE PIECE(ワンピース)』(集英社)には、海賊や海軍といった戦いを生業とする者たちが数多く登場する。しかし、その枠に属さない一般人の中にも、驚異的な強さを持つ人物が存在するのだ。
四皇や海軍大将といった規格外の強者を中心に物語は進みがちだが、視点を変えて世界の裏側や街角に目を向けると、一般人ながら強者と呼ぶにふさわしいレベルの猛者も多数登場している。
もちろん、世界トップレベルの強者と比べることはできないものの、ある者は派手に、ある者はひっそりと、激動の時代を生き抜いているのもまた事実だ。
本記事では、これまで公式な戦力として語られる機会が少なかった「最強クラスの一般人」に焦点を当て、その実力や存在感が物語にどう影響しているのかを考察していこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■世界経済新聞のトップは伊達ではない? モルガンズ
世界経済新聞社の創設者兼社長であるモルガンズは、作中でも屈指の情報屋として知られている。表社会と裏社会の両方に精通しており、四皇ビッグ・マムのお茶会に招かれるほど裏社会でも大物として一目置かれる存在だ。
ビッグ・マムですら彼の情報能力を「流石」と評したほどで、世界中に張り巡らされた情報網の質と量は折り紙つき。それでいて、たとえ世界政府から圧力がかかろうが、四皇の怒りを買う可能性があろうが、ビッグニュースと判断すれば事実を曲げずに報じるという、独自性に満ちた報道姿勢を貫く。
戦闘面に関しては明確な描写が少なく、強さを測るのは難しいが、その実力を垣間見ることはできる。マリージョアで起きた世界会議(レヴェリー)の裏で起きた事件をめぐって、世界政府直属の諜報機関サイファーポールから記事のもみ消しを強要された際、銃を構えた諜報員をパンチ1発で倒してみせた。
この諜報員はCP9のロブ・ルッチほどではないにしても、れっきとした政府に仕えるエージェントである。銃口を向けられようとも一切臆することなく対処する姿から、モルガンズは相当なフィジカルを備えていることがわかる。
モルガンズは、動物(ゾオン)系悪魔の実トリトリの実モデル「アルバトロス」の能力者であり、常に人獣型の姿で活動。報道機関のトップだからか、あるいは身元を知られたらまずい立場なのかは不明だが、徹底して素顔を隠している。海賊・政府の両方から狙われてもおかしくない立場であることを考えると、こうした荒事にも対処できる実力は必要不可欠なのかもしれない。
作中ではあくまで記者としての側面が強調されているが、動物系能力者特有のタフさはおそらく持っているはずだ。情報戦だけでなく、正面からの戦闘においても、相当な強さを秘めていると思われる。
■伝説の英雄に傷を負わせた!? カーリー・ダダン
一応山賊なので一般人の枠に含めていいのか微妙なところだが、ルフィやエースの育ての親という印象が強いカーリー・ダダンも挙げておきたい。
海軍中将モンキー・D・ガープとの縁については作中で明かされていないものの、旧知の仲であることは確かであり、ガープからは山賊行為を黙認されている様子がうかがえる。そのため、普段のダダンはガープに対してあまり強く出られず、頭の上がらない関係にあるようだ。
そんなダダンは、ガープに半ば押しつけられる形でエースとルフィの親代わりとなり、彼らが独り立ちするまで面倒を見続けた母のような存在であった。
自身も780万ベリーの懸賞金がかけられており、かつてルフィがブルージャム海賊団にさらわれた際には、一家を率いて救出に向かうほどの統率力と戦闘力、そして深い愛情を持ち合わせている。
特筆すべきは、頂上戦争でエースが命を落とした後のエピソードだろう。深い悲しみと怒りの中、帰郷したガープに対し、“なぜエースを見殺しにしたのか”と詰め寄ったダダンは、棍棒と拳で殴りかかった。その心情を汲んだのかガープは無抵抗を貫いたが、作中でも最強クラスの実力者である海軍の英雄にケガを負わせた事実は重い。
あのシャンクスでさえ、近海の主に腕を食いちぎられたように、どれほどの強者であっても油断すれば傷を負う。だが、ガープの立場と実力を知りながら正面から怒りをぶつけ、彼を打ちのめした一般人は、後にも先にもダダンくらいのものだろう。
ルフィとエースという世間的には大犯罪者の血を継いでいる強者2人を立派に育て上げた功績は計り知れない。血のつながりを超えた愛情を持ち、その感情が爆発したときには海軍中将をも殴りつけたダダン。“母は強し”という言葉がそのまま当てはまりそうな、ある意味“最強の女性”といえるだろう。


