1984年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始された鳥山明さんの『ドラゴンボール』は、バトル漫画の金字塔ともいえる人気作品だ。本作の大きな魅力といえば、次々と現れる強敵たちとの激闘を経て、どんどん強くなっていく主人公・孫悟空の姿にあるだろう。
彼があれだけの強さを誇ったのは、サイヤ人という出自だけでなく、厳しい修行を積んできた賜物でもあることは言うまでもない。だが、実は彼が出会ってきた人々の温かい心も、彼の強さを支える理由の1つかもしれない。
特に物語序盤からレッドリボン軍編にかけては、悟空がいくつかの「親子の愛」に触れ、それが彼の戦う動機や成長の糧となるシーンが多く描かれている。
そこで今回は、悟空の冒険を支え、時にはその原動力にもなった親子たちにスポットを当てて紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます
■悟空が他者のためにドラゴンボールを集めるきっかけとなった「ウパ親子」
悟空にとってドラゴンボール集めは、当初は“じいちゃんの形見である四星球を探す”という個人的な目的だった。しかし、その目的が“他者のために使う”という大きな転換点となったのが、聖地カリンに住むウパとボラの親子である。
父親のボラは屈強な肉体を誇り、先祖代々聖なるカリン塔を守り続けてきた人物だ。しかし、ドラゴンボールを狙うレッドリボン軍の殺し屋・桃白白によって、悟空と幼いウパの目の前で無惨にも殺害されてしまう。
激しい怒りを覚えた悟空は反撃に出るも、桃白白に敗北。その後、意識を取り戻した悟空は悲しみに暮れるウパに対し「オラ ドラゴンボールぜんぶ集めて おまえのとうちゃんを生きかえらせてやるっ!!」と宣言。その後、武術の達人であるカリン様のもとで修行を積んだ悟空は、見事桃白白を倒してドラゴンボールをすべて集め、ボラを蘇らせることに成功するのである。
それまで純粋に“強くなること”を追い求めてきた悟空が、この親子との出会いによって“誰かのために戦い、”ドラゴンボールを集め始めた。この出来事をきっかけに、大切な人を生き返らせるための希望のアイテムとしてドラゴンボールが使われるようになった点も見逃せない。
父を慕うウパの純粋な心と、命懸けで聖地を守ろうとしたボラの勇姿が、悟空に真のヒーローとしての自覚を芽生えさせたのだろう。
■極寒の地で悟空を救い、レッドリボン軍との戦いをサポートした「スノ親子」
レッドリボン軍との戦いの最中、極寒の地であるジングル村で悟空の命を救ったのが、少女・スノとその母親である。
四星球を求めて旅に出た悟空は、途中でレッドリボン軍に筋斗雲を破壊され、やむなく飛行機で北へ向かうも墜落。雪の中で力尽き、凍って倒れてしまう。
そんな悟空を発見し、引きずって家まで運んで介抱してくれたのがスノだった。スノの母も悟空に温かい飲み物を与え、さらに、スノの防寒具を貸してくれるなど献身的に悟空を支える。
こうして元気を取り戻した悟空はレッドリボン軍の基地であるマッスルタワーへ向かい、捕らえられていた村長や人造人間8号を助け、再びスノの家で食事を御馳走になるのであった。
当時、スノ親子が住むジングル村はレッドリボン軍の支配下にあり、住民たちは村長を人質に取られて自由を奪われていた。そんな状況の中、悟空を命がけで救出したスノ親子の勇気ある行動が、結果的に村の解放につながる大きなきっかけとなったのだ。
その後、西の都に旅立つ悟空に、スノ親子はたくさんのお弁当を渡している。それはレッドリボン軍の支配から救ってくれたお礼もあるだろうが、スノ親子の行動は見返りを求めない純粋な優しさだった。 あやうく凍え死ぬところだった悟空にとって、スノ親子の温かいもてなしはこの上ない強力なサポートだったといえるだろう。


