アニメ『サムライトルーパー』が昭和女子の「オタク心」をつかんだ理由 美少年たちの青春群像劇が巻き起こした「圧巻のムーブメント」【昭和オタクは燃え尽きない】の画像
DVD『鎧伝サムライトルーパー 第一巻』(アニプレックス) (C)サンライズ

 1970年代のロボットアニメやバトル作品の多くは「男の子向け」とされ、当時の女の子にはちょっとだけハードルが高い存在でした。

 その後『超電磁マシーン ボルテスV』(1977年)のプリンス・ハイネルや、『闘将ダイモス』(1978年)のリヒテル提督のような、いわゆる「美形悪役キャラ」の登場で、筆者の周囲にもロボットアニメに熱心な女性ファンが増え始めたと記憶しています。

 1980年代に入ると、『機動戦士ガンダム』(1979年)の影響もあってアニメが市民権を得始め、それに合わせて女性ファンも急増。特に『六神合体ゴッドマーズ』(1981年)は女性から絶大な支持を集め、現実世界で主人公の双子の兄マーグのお葬式が行われたほどでした。

 このあたりから女性のアニメ・漫画ファンが勢いを増していきます。

 『キャプテン翼』が1983年にアニメ化されると、女性ファンの間でも大ブームに。続いて1986年にアニメ化された『聖闘士星矢』も爆発的な人気を集め、どちらも少年誌の掲載作品ながら女性ファンから圧倒的な支持を得ました。

 その流れのなか、1988年4月から放映が始まったのが『鎧伝サムライトルーパー』。『キャプテン翼』を契機にオタク女子が増え、『聖闘士星矢』で少年たちが聖衣(クロス)と呼ばれるバトルアーマー(プロテクター)を着て戦う作品に魅了され、その土壌から『トルーパー』が生まれたのです。

 昭和のロボットアニメを支えた「サンライズ」が、ロボット抜きの“変身ヒーローもの”『トルーパー』を制作。女性ファンを意識したグッズ展開、声優ユニット、OVAなど、作品括りでは初となる試みもあって、とんでもない旋風を巻き起こしました。

 当時、その熱狂を間近で見てきた筆者が、『サムライトルーパー』ブームを振り返りたいと思います。

■「俺の心に鎧が走る!」鎧擬亜をまとった少年たちが昭和女子を魅了

 『鎧伝サムライトルーパー』は、1988年(昭和63年)4月30日から約1年間、テレビ朝日系列で放映されたバトルアニメ。邪悪な帝王・阿羅醐(アラゴ)率いる妖邪の脅威から人間界を守るため、「鎧擬亜(ヨロイギア)」に選ばれし5人の少年が戦う物語です。

 少年たちの熱い友情と成長、そして強敵との死闘を描いた『トルーパー』は、『星矢』で培われた「美少年チームの青春群像劇」という作風で、増え始めた女性オタクの心をつかみます。

 作中には全体的に和風テイストが盛り込まれ、主人公の5人にはそれぞれのキャラに合った鎧や技、武器、文字(心)などが設定されています。

 例えば真田遼には「烈火のリョウ」の二つ名があり、これは慈愛を尊ぶ心「仁」を根本原理とする赤い鎧「烈火」からとられています。他の4人も、羽柴当麻は「天空のトウマ」、伊達征士は「光輪のセイジ」、毛利伸は「水滸のシン」、秀麗黄(シュウ・レイ・ファン)は「金剛のシュウ」といった具合。個々の苗字を見ても分かる通り、ほとんどの先祖が戦国武将となっています。

 このように鎧姿と名前などから、おおよその性格や立ち位置などが分かる設定。これは現在にも通じる「推しカラー」の明確化であり、キャラ付けの視覚化ともいえるでしょう。

 さらに敵幹部の「四魔将」も「忠」「孝」「悌」「忍」という気質を持った戦士で、後半に登場した女戦士・迦遊羅(かゆら)まで含め10人もの「推し」が登場。このあたりの“追加戦士”要素は、『美少女戦士セーラームーン』(1992年)に先駆け、かなり先進的だと感じました。

 そんな『トルーパー』という作品の登場に、春先まで『星矢』で騒いでいた女性アニメファンの多くが“転んで”いきました。

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