■『トルーパー』人気が爆発するまで

 1988年4月から放映された『サムライトルーパー』ですが、それから1か月もしないGW頃の「同人誌即売会」では、早くもポツポツとコピー誌や無料ペーパーなどを見かけました。その後、8月の夏コミでは、『キャプテン翼』や『聖闘士星矢』のスペースで『トルーパー』の同人誌を発行するサークルも登場。

 『トルーパー』人気は終盤に差しかかった頃に爆発したと言われていますが、すでに初夏にはマグマのようなくすぶりが生まれていたのです。

 ちなみに1988年9月3日には、放送済みの第17話が再度放送されるという「二重放送事故」が発生。アニメ好きのあいだで今も語り草となっています。

 しかし、当時はロボットアニメのようなオモチャの売れ行きは期待できなかったようです。ところが、女性ファンがCD(イメージソング)、テレビ版ビデオやOVA、書籍、グッズなどを爆買い。

 そんな女性人気の影響もあってか、放送終了後に制作されたOVAの映像はテレビ版よりもかなり美しくなり、1989年から1991年の短期間に3シリーズ(計11話)が発売。そのうちの『輝煌帝伝説』(1990年)は劇場公開もされ、映画鑑賞だけでなくグッズを手に入れるために徹夜する女性ファンまで続出しています。

 また、『トルーパー』のアニメ放映が終わった直後の1989年3月には、会場移転などの影響で延期されていた冬コミ(C35)が開催されるという、女性オタクにとっては最高のタイミングを迎えます。

 コミケの“女性向けジャンル”として『トルーパー』はぶっちぎりの人気を誇り、続く『キャプテン翼』とは倍以上の数を記録。全盛期となった1990年の夏コミ(C38)では、全13000サークルに対し、『トルーパー』だけで2000を超えるサークルがあったといわれています。

 これは17年後に大ヒットした『テニスの王子様』を抑え、いまだに女性向けジャンルでは歴代1位の記録。いかに当時の『サムライトルーパー』人気が凄まじかったかを物語っています。

■声優が本物のアイドル並みの人気に!?

 さて、『トルーパー』人気を強力に後押ししたのが「NG5」の存在です。

 「NG5」とは、『トルーパー』の主要キャラ5人の声を担当した声優ユニットのこと。烈火のリョウ役・草尾毅さん、水滸のシン役・佐々木望さん、天空のトウマ役・竹村拓さん、光輪のセイジ役・中村大樹さん、金剛のシュウ役・西村智博さんで結成されました。

 今の声優アイドルやマルチタレントの先駆けともいわれていますが、草尾さんたちの年齢が20代中盤~後半、竹村さんに至っては当時30代後半。今でいうアイドル声優というより、作品の圧倒的な人気によって声優がアイドルへと押し上げられた印象でした。

 番組終了後の1989年から約1年の活動期間ながら、登壇したイベントは数知れず。コンサートでは10~20代の女性ファンが大挙押しかけ、会場では失神する人も続出。その盛り上がりはネットも普及していない時代ながらも広く知れ渡り、アニメ雑誌やアニメ情報ラジオなどの専門メディアのみならず、夕方のニュースやドキュメンタリーで取り上げられるほどでした。

 筆者も当時、週刊誌の車内吊り広告で「声優コンサートで少女の失神続出」といった見出しを見かけて驚いたのを覚えています。

 NG5としてCDやライブビデオ、写真集なども爆発的に売れ、キャラソンではキャラクターになりきって歌唱。アニメ雑誌ではNG5の特集記事が組まれ、まるでモデルのような写真が掲載されました。

 こうしたCDの一部や冊子などのイラストは、女性人気の高いイラストレーター・みずき健さんが担当。みずきさんは情報雑誌『ぱふ』の表紙を手がけ、『キャプテン翼』や『サムライトルーパー』などの同人誌も描いていたこともあって、一部ファンのあいだでは有名な存在でした。塩山紀生さんデザインのアニメ絵の中に、少女漫画のように繊細で淡い絵柄のみずきさんのイラストがあったのが、当時とても斬新に感じられました。


 2026年1月からは『鎧伝サムライトルーパー』正統続編となるアニメ『鎧真伝サムライトルーパー』が放映されます。この続編アニメが最初に発表されたとき、当時の思い出が蘇った女性ファンも多いのではないでしょうか。

 放映から35年以上経っても鮮やかな記憶として残り続ける『トルーパー』は、その後の作品にも大きな影響を与えた新しいかたちのコンテンツであり、それと同時に多くの女性に愛された作品だったのは間違いありません。

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