■亡き姉の夢を炭治郎に託した胡蝶しのぶ
蟲柱・胡蝶しのぶは、炭治郎の持つ慈悲深い心に注目した人物である。
蝶屋敷での機能回復訓練の最中、炭治郎はしのぶに対し、不意に「怒ってますか?」と問いかける。嗅覚で人の感情が分かる炭治郎だからこそ気づけた本心だったが、核心をつかれた彼女は自身の亡き姉と“夢”について静かに語り始める。
彼女の亡き姉・胡蝶カナエは、炭治郎のように優しい心を持つ剣士で、鬼に殺されるその間際まで鬼を哀れんでいたという。しのぶは姉の夢であった「鬼と仲良くする」という夢を引き継ごうとしていた。
しかし、家族を鬼に殺されたしのぶにとって、心の奥底に抱く鬼への憎悪は消しがたいものだった。カナエの夢を継ごうとすればするほど、自身の本心との乖離に疲弊していたのだ。そこへ、姉と重なる優しさを持つ炭治郎が現れたことで、しのぶは彼に夢を託すことを決めるのである。
事実、炭治郎はこれまで多くの鬼に対して同情し、慈悲深いふるまいを見せてきた。特に、自ら頸を差し出した鬼に対して、苦痛を与えない斬撃「水の呼吸 伍ノ型 干天の慈雨」を使用したこともあり、消滅していく鬼が救いを感じるほどであった。
禰󠄀豆子を守り戦う炭治郎の姿に、姉の面影と夢の実現の可能性を見出したしのぶ。彼女の「どうか禰󠄀豆子さんを守り抜いてね」という言葉は、夢と未来を託す大きな意味を持っていたのである。
■一瞬で忌々しい仇の面影を重ねた鬼舞辻無惨
敵である鬼の始祖・無惨もまた、炭治郎に眠るポテンシャルを誰よりも早く見抜いた人物といえる。浅草で炭治郎と初めて対峙した際、無惨は炭治郎がつけていた花札のような模様の耳飾りに気づき、顔色を変えた。
その後すぐに配下の鬼を呼び寄せ、炭治郎の頸を取ってくるよう命令している。鬼殺隊とはいえ、当時の炭治郎の階級は最下級隊士であり、柱には到底及ばない実力であった。にもかかわらず、無惨がこれほど執着したことからも、彼が炭治郎に特別な“何か”を感じとったことは明らかだろう。
無惨が注目した耳飾りは、竈門家に代々受け継がれてきたものだ。そしてそれは、かつて無惨を死の寸前まで追い詰めた“始まりの呼吸の剣士”が身につけていたものと同じものであった。無惨は炭治郎の姿に、彼が唯一警戒するその剣士の面影を重ねたのだ。
そして、その予感は的中する。 炭治郎は後に、竈門家に伝わる「神楽」から着想を得て、「ヒノカミ神楽」という独自の呼吸を生み出すほどの成長を遂げた。無惨は、炭治郎の耳飾りを見た瞬間、その内に秘められた脅威を感じ取っていたのである。
炭治郎の剣士としてのポテンシャルの高さは、彼の活躍を見れば一目瞭然だ。しかし、彼の真価は強さだけではない。心も清く優しい炭治郎は、人のみならず、敵であるはずの鬼までも魅了している。
一瞬の出来事で、彼に眠るポテンシャルを見抜いていた5人の着眼点に注目してみると、炭治郎というキャラクターの奥深さを再認識することができる。
そんな炭治郎が、最終決戦となる「無限城」で繰り広げる戦いはアニメでどのように描かれるのか。今後公開される劇場版のほうも目が離せない。


