最下級隊士だったのになぜ?『鬼滅の刃』炭治郎に眠るポテンシャルを見抜いた「5人の着眼点」義勇に珠世、そして“あの人物”も…の画像
アニメ『劇場版 鬼滅の刃 無限城編』(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

 吾峠呼世晴氏の漫画『鬼滅の刃』は、主人公・竈門炭治郎が家族を鬼に殺され、唯一生き残った妹・禰󠄀豆子までもが鬼に変えられてしまうという凄惨な出来事から物語が始まる。禰󠄀豆子を人間に戻すべく、炭治郎は鬼を狩る組織「鬼殺隊」に入隊し、その後、鬼殺隊の最高階級である「柱」にも引けを取らない活躍を見せていくのである。

 並の隊士とは違う、炭治郎が秘めていた剣士としてのポテンシャル。実はそんな彼の才能を、物語の早い段階で見抜いていた人物が5人いた。そして彼らの見立て通り、炭治郎は後に鬼殺隊の中心を担う重要な人物へと成長していくのだ。

 そこで今回は、炭治郎の類稀なるポテンシャルをいち早く見抜いた人物たちに焦点を当て、彼らがどのような点に注目したのか、シーンとともに詳しく紹介しよう。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■炭治郎に眠る戦闘センスを見抜いた冨岡義勇

 炭治郎の秘めたポテンシャルに最も早く気づいた人物が、鬼殺隊・水柱の冨岡義勇だ。

 2人の出会いは物語冒頭。家族を鬼に殺された炭治郎が、唯一生き残った妹・禰󠄀豆子を背負い雪山を下山していた時だ。

 鬼と化した禰󠄀豆子が炭治郎に襲いかかったところに、義勇は背後から現れる。鬼殺隊士として禰󠄀豆子を殺そうとする義勇に、炭治郎は“妹を人間に戻す”と必死に懇願するが、その言葉は届かない。

 そればかりか炭治郎の甘さを一蹴し、非情にも禰󠄀豆子に刀を突き刺す。それをきっかけに、炭治郎はようやく義勇に攻撃を仕掛けた。

 まず彼は石を投げつけて義勇の注意を逸らしたあと、別の石を投げると見せかけて斧を上空に放り投げた。そして自身は丸腰で斬られる覚悟で突進。わざと大きく振りかぶることで義勇をだまし、落下してくる斧で不意をつくという策を実行するのである。

 この一連の動きから、義勇は炭治郎に非凡な戦闘センスを見出したのだろう。目を覚ました炭治郎に、育手である鱗滝左近次の元へ行くよう促し、鬼殺隊に入るきっかけを与えた。

 また、義勇は禰󠄀豆子にも特別な可能性を感じていた。彼は鱗滝への手紙に「この二人には何か他とは違うものを感じます」と記している。実際、彼の見立て通り、炭治郎は剣士として才能を発揮。鬼化した禰󠄀豆子も自我を保ち、ついには太陽を克服するなど、他の鬼とは一線を画す存在となっていくのである。

■優しい性格の炭治郎に可能性を見出した珠世

 鬼の身でありながら、鬼の始祖・鬼舞辻無惨を殺す機会を虎視眈々と狙っていた珠世もまた、炭治郎に可能性を見出した1人だ。

 珠世が炭治郎と出会ったのは浅草でのこと。無惨が自身の正体に気づいた炭治郎から逃れるために一般男性を鬼に変え、騒ぎを起こした時だった。

 その際、炭治郎は鬼化した男性を「この人」と呼び、必死に抑えようとする。その姿に感銘を受けた珠世は炭治郎の前に姿を現し、自身の血鬼術「惑血 視覚夢幻の香」で群衆を惑わして彼を逃がしている。

 医者でもある珠世は炭治郎の境遇を聞き、禰󠄀豆子を人間に戻すための研究に協力することを約束。炭治郎にとって心強い存在となっていく。

 珠世は、かつて病で余命いくばくもない時に無惨に誘われ鬼になり、自分の家族を食い殺したという壮絶な過去を持つ。そのため、無惨への憎しみは深く、同時に鬼として生き続けることへの葛藤を抱えていたのだろう。そんな珠世にとって、鬼を“人”として扱ってくれる炭治郎の優しさは心を動かすのに十分だった。

 また、鬼殺隊士になりたての炭治郎に対し、“無惨の血が濃い鬼の血液を採取して来てほしい”というお願いもしている。彼に剣士としてのポテンシャルを感じとったのかは定かではないが、“妹を人間に戻す”という彼の強い信念を感じ、このような無謀ともいえる願いを託したのだろう。

 珠世の持つ知識や技術は、のちに鬼殺隊にとって大きな力となる。出会いは短い場面であるが、長い間身を隠して生きてきた彼女が心を開き、物語が大きく動くきっかけとなった重要なシーンである。

■会って間もなく継子候補にした煉獄杏寿郎

 鬼殺隊には、柱が直々に指導にあたる「継子」という制度が存在する。出会って間もない炭治郎をその継子に誘ったのは、炎柱・煉獄杏寿郎だった。

 杏寿郎と炭治郎は「無限列車編」で任務を共にする。初対面では鬼の禰󠄀豆子を連れている炭治郎に対し「鬼もろとも斬首する!」と断罪しようとしていたが、無限列車での再会時には、お館様の判断を受け入れ、禰豆子の同行を認めていた。

 そればかりか「俺の継子になるといい 面倒を見てやろう!」と、唐突に継子になるよう勧誘。これには思わず炭治郎も「待ってください」とツッコむほどだった。

 さらに炭治郎の刀が“出世できない剣士の色”とされる黒色だと知ると、「俺の所で鍛えてあげよう もう安心だ!」と宣言。杏寿郎の面倒見の良い快活な人柄がうかがえるシーンでもあった。

 当初はその勢いに圧倒されていたものの、戦いの中で次第に彼の強さに惹かれていった炭治郎。継子になることは叶わなかったが、彼の遺した「心を燃やせ」という言葉は、幾度となく炭治郎を勇気づけた。

 柱である杏寿郎が、考えもなしに「継子になれ」とは言わないだろう。彼は短い時間の中で、炭治郎の素質や誠実な人柄を見抜いて声をかけたに違いない。もしも炭治郎が杏寿郎の継子になっていたら、どれほどの成長を遂げていたのだろうか。その可能性は計り知れない。

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