■2020年代:音楽で人々に寄り添った感動大作『エール』
2020年に放送された『エール』は、数々の名曲を生み出した作曲家・古関裕而さんをモデルとした作品である。主人公・古山裕一とその妻・音の人生を描き、最高視聴率は22.1%を記録。特に、舞台となった福島地区での期間平均視聴率は32.1%に達するなど、絶大な支持を集めた。
夫を支え、自らも歌手としての夢を持つ妻・音を演じたのは二階堂ふみさんだ。彼女は持ち前の透明感と高い表現力で、激動の時代を生き抜きながら常に夫を励まし、また自身も成長していく女性像を体現した。
作中、たびたび登場する音の歌唱シーンは、すべて二階堂さん本人が歌唱している。当初はオペラ歌唱の吹き替えも検討されていたが、二階堂さんは1年をかけて高い歌唱力を習得し、歌う場面も徐々に増えていったという。裕一とともに、戦時下で希望を見失いそうになった人々に音楽で「エール」を送った音の姿は、多くの視聴者に感動を与えた。
物語のラストは、病に伏せた音が裕一のもとで最期を迎えるかと思われた。しかし、シーンはいつの間にか若き日の2人に戻り、海岸を走る場面に。この切なくも美しい印象的なラストシーンに涙した視聴者は多かっただろう。
さらに、最終回ではNHKホールでコンサートを開催。裕一と音をはじめとした出演者が総出で歌謡祭を開くという、朝ドラ史上でも類を見ない斬新な演出も大きな話題となった。
2000年代以降も、私たちに爽やかな朝と感動を届け続けている朝ドラ。主役を務めたヒロインたちは、その時代の空気とマッチすることで多くの視聴者の心を掴み、高い視聴率を残してきた。
『おしん』のような驚異的な視聴率を再び記録するのは難しいかもしれないが、これからも視聴者の毎日の生活に幸せを与えてくれるような名作の誕生に期待したい。


