国民的ドラマと聞けば、多くの人がNHKの連続テレビ小説、通称「朝ドラ」を連想するだろう。毎朝、視聴者に元気と感動を届ける朝ドラは、日本のテレビ史において常に高い注目を集めてきた。
その歴代視聴率の頂点に君臨するのは、1983年から1年間に渡って放送された不朽の名作『おしん』だ。最高視聴率はなんと62.9%と脅威の数字を叩き出し、その記録は未だに破られていない。
しかし、時代が移り変わっても人々の記憶に残る朝ドラは数多く生まれている。ここでは、2000年代以降に放送された作品の中から、各世代で最高視聴率を獲得した代表作をヒロインの魅力とともに振り返りたい。
※本記事には各作品の内容を含みます
■2000年代:沖縄の風を運んだ希望の物語『ちゅらさん』
2001年に放送された『ちゅらさん』は、沖縄の美しい自然を背景に、天真爛漫なヒロイン・古波蔵恵里が成長していく物語だ。本作は、最高視聴率29.3%を記録している。
主演を務めた国仲涼子さんが演じた恵里(通称えりぃ)は、太陽のような明るさと、何があってもくじけない前向きな姿勢が最大の魅力だった。現代を舞台に、上京した恵里が挫折を繰り返しながらも夢に向かってひたむきに頑張る姿は、多くの視聴者に希望と共感を与えた。
また、沖縄を舞台にした朝ドラは本作が初めてであり、テーマソングから出演者に至るまで、沖縄にゆかりのある人物が多く出たことも話題となった。主役の国仲さんも沖縄出身であり、「おばあ」といった沖縄独特のことばも魅力の1つだった。『ちゅらさん』を通して、沖縄の歴史や文化に触れた視聴者も多かっただろう。
本作は続編がパート4まで制作されるなど、ドラマが終了しても根強い人気を保った。事実、本放送終了から8年が経過した2009年5月にNHKオンデマンドで数話が無料配信された際には、パソコンの新規登録会員数が過去最大を記録したという。
『ちゅらさん』は、まさに沖縄の太陽のような温かさと癒しを視聴者に与えてくれるドラマであった。
■2010年代:食と夫婦愛で日本を温めた『ごちそうさん』
2013年から放送された『ごちそうさん』は、手料理で家族を支えるヒロイン・卯野め以子が大阪の旧家へ嫁ぎ、激動の昭和を「食」の力で生き抜く姿を描いた作品だ。最高視聴率は27.3%を獲得している。
ヒロイン・め以子を演じたのは杏さんである。彼女は、め以子が持つ食べ物への強い愛情と、逆境に負けない芯の強さを見事に表現した。食いしん坊のめ以子が豪快かつ美味しそうに食事を頬張る様子は見ていて微笑ましく、当時視聴していた筆者はとても食欲が湧いたことを覚えている。
また、着物姿のまま川に落ちたり、西門悠太郎(東出昌大さん)へ逆プロポーズをしたりと、予想のつかない展開も視聴者を夢中にさせた。さらに、め以子の義姉である和枝(キムラ緑子さん)から受ける陰湿な嫌がらせは、朝ドラらしからぬドロドロ感もあり、それに対してめ以子がどのように立ち向かっていくのか、目が離せなかった。
戦争という困難な時代においても、家族のために創意工夫を凝らして食卓を守り続けため以子のたくましい姿は、多くの視聴者から支持を得た。作中、め以子が心を込めてかき混ぜる“ぬか床”も印象的で、放送当時は朝ドラの影響を受け、自家製のぬか漬けを始める人が増えるという社会現象も起きたのである。


