■えっ、誰?『メタルマックス2』

 最後に紹介したいのが、1993年にデータイーストから発売された『メタルマックス2』である。

 本作は主人公が両親の仇を討つ物語であり、その相手は人類を支配しようとする「バイアス・グラップラー」という武装組織である。主人公の少年はハンターとなり、復讐のため組織を倒す旅に出ることになる。

 道中では「賞金首」と呼ばれる個性的な敵たちと戦いつつ、拠点を襲われたり仲間を奪われたりと、なかなかにハードな展開が続く。戦車を改造して戦うという独自性、賞金首を倒して金を稼ぐという設定など、独特な世界観が特徴だった。

 しかし、終盤。いよいよ黒幕が明かされるというタイミングで登場するのは「バイアス・ブラド」である。

 彼は、人類が高度な文明を築いていた時代に存在した世界的大企業「ブラド・コングロマリット」の経営者であり、科学者だった男だ。さらに世界を荒廃させた原因でもある男なのだが、そのことを知っている者はもはや誰もおらず、賞金首にも指定されていない。

 プレイヤーはおろか、ゲームの世界の住人ですら「誰?」と言いたくなるような存在である。

 さすがにラスボスとあって、かなりの強敵であり、生半可な状態で挑むとあっさり返り討ちにあってしまうほどだ。歯ごたえがあるのはいいのだが、やはりどうしても最後まで「お前誰?」感がぬぐえないラスボスであった。

 

 スーファミ時代のRPGは、単なるバトルの強さや演出だけでなく、「ラスボスの正体をどう描くか」という点にも力を注いでいた作品が多い。裏切り、ギミック、唐突な登場……手法はさまざまだが、いずれも強烈な印象を残している。

 今のRPGでは、より洗練されたドラマや複雑な伏線が用意されているが、当時の「余白」のある演出は、プレイヤーの想像力に火をつける「遊び」があったように思う。

 とはいえ、当時多くの少年少女たちが「おまえやったんかい!」とツッコミを入れたボスがいたのは間違いない。

  1. 1
  2. 2