RPGのクライマックスといえば、やはりラスボス戦。何十時間にも及ぶ冒険の果て、主人公たちの成長の集大成として立ちはだかるその存在は、ストーリーの締めくくりとして重要な意味を持っている。
だが、スーパーファミコン黄金期には、「いや、こいつがラスボスなの!?」「今まで空気だったじゃん!」というような、ラスボスの正体そのものがサプライズだった作品も少なくない。その驚きは、プレイ時から長い月日が経った今でも鮮明に思い出せるほどだ。
今回は、そんな「正体に驚かされたラスボス」について、当時の衝撃とともに振り返ってみたい。
※本記事には各作品の核心部分の内容を含みます
■明らかにコメディリリーフだったのに……『FF6』
まずは、『ファイナルファンタジーVI』(1994年、スクウェア)からラスボス「ケフカ」を振り返りたい。
本作は魔法が失われた世界を舞台にしたRPG。ガストラ皇帝が作ったガストラ帝国は魔導による世界征服を目論み、幻獣から魔導の力を抽出して人工魔導士を作り出す実験を行っていた。
その実験台の1人が、ガストラの配下だったケフカ・パラッツォなるキャラクター。ケフカは魔導を注入された影響で精神が崩壊しており、一人称も「ボクちん」「わたし」「俺様」とコロコロ変わる。残虐な姿を見せることもあれば幼稚な言動を見せることもある、非常に不安定な人物だ。
ケフカが初登場するのは序盤も序盤、ティナとロックがフィガロ王国の国王・エドガーに助けを求めに行った後のこと。ケフカはティナを渡すようエドガーに迫り、城に火を放つという暴挙に出る。
だが、エドガーの機転によりまんまと逃げられてしまい、ケフカはちょっと間の抜けた姿を晒すのである。
このように『FF6』の暗い世界観の中にあって、ケフカは序盤から頻繁に登場しており、道化師のような見た目の通り、時にコメディリリーフのような役割も担っていた。
そんなケフカは物語中盤で皇帝ガストラを裏切り、三闘神の力を手に入れて世界を崩壊へと導く。
世界が崩壊し絶望に包まれる中、主人公たちは希望を失うことなく、散り散りになった仲間たちを集めてラストダンジョンに潜むケフカのもとへ向かう。
とはいえ、これまでさんざん間抜けな姿を見せてきたケフカである。最後の最後で彼と戦うことになったとき、「まさかこいつがラスボスのわけがないだろう」「きっとケフカを倒した後に真のボスが現れるはずだ」と予想したプレイヤーもいたのではないか。
だが結局、三闘神の強力な力を得たケフカがラスボスであり、ケフカを倒すことでゲームはエンディングを迎える。
コミカルなキャラクターから、徐々に悪意を増幅させ最後は手に追えない破壊神へと変貌するケフカ。シリーズを代表するボスのひとりだが、初プレイ時にこいつがラスボスだと見抜いた子どもは相当少なかったに違いない。
■まさか最初の村の長老が…『天地創造』
続いて、1995年にエニックスから発売されたアクションRPG『天地創造』である。
ある日、主人公のアークが住む「地裏」の村・クリスタルホルムが異変に巻き込まれ、アークと長老を残して全員が凍りついてしまった。アークは村を救うため、長老の言葉を頼りにクリスタルホルムを飛び出し、冒険の旅に出る。
これまでクリスタルホルムしか知らなかったアークは、初めて見る地表の世界で冒険を繰り広げることになる。そして、失われた世界を蘇らせていくのだ。
しかし、終盤で世界の真実にたどり着いたとき、主人公のアークだけでなく、プレイヤーも衝撃を受けたことだろう。
実は地裏の世界は闇の意思・ダークガイアによって作られた世界であり、そのダークガイアこそがクリスタルホルムの村の長老だったのである。
ダークガイアはかつて光の意思を倒しており、再び光が復活することのないようクリスタルホルムを作って監視をしていたのだ。
そして、いつか光の意思によって倒されることを恐れ、世界を不完全に復活させた後で再び破滅させる計画を思いつき、それを実行に移した。その役割を与えられたのが主人公のアークだったのである。
アークにとってはさまざまな葛藤や悩みが渦巻くラスボス戦だったかもしれない。
だが、プレイヤーとしては、予想外の設定と展開、想像もつかないようなラスボスに、とにかく驚かされるばかりだった。


