■勝男・ミナト・渚から刺激を受けて変わっていく鮎美

 勝男から離れ、渚夫婦の家で暮らし始めた鮎美。自由な価値観で生きる渚は、これまで人に合わせてばかりだった鮎美に自分の気持ちに目を向けるきっかけを与える存在だった。しかし渚の世界に触れ、髪をピンクにしてクラブで踊るようになった鮎美は、まだ自分らしさを持てず流されているだけ。その迷走ぶりに視聴者からは心配の声も上がっていた。

 転機は第3話、ミナトとの出会いだ。彼に惹かれてデートをするも、嫌なことを嫌と言えず結局はデート中に突然帰ってしまう。これはまさに鮎美特有の自分の気持ちを押し殺す癖の表れだった。

 モヤモヤを抱えたまま相手に合わせる行動は、多くの人が経験したことがあるはずだ。特に好かれたい相手には、自分の意見をはっきり言うのが難しい。デート中に突然帰るのは、やはりあまり良いとは言えないが……。

 だが、気持ちを伝えてお互いをわかり合うことの楽しさを渚から教えられると、ミナトに自分の意見を伝えて告白。ここで鮎美は一歩、自分の足で前へ踏み出す。とはいえ、付き合ったものの、元カノと自由に会うミナトに嫌と言えず、尽くし癖も簡単には変えられない。

 変わるきっかけを与えたのは勝男だった。第5話、勝男が自分の悩みを押し殺す兄に、涙ながらに「心に閉じ込めないでほしい」と訴える。その姿に胸を打たれた鮎美は、自分も気持ちを抑え込んでいたことに気づくのである。

 そしてその夜、言えずにいた「元カノに会ってほしくない」という本音を初めてミナトに伝えた鮎美。これまで我慢する恋愛をしてきた彼女にとって、自分の気持ちを言葉にするのは大きな前進。確かな成長が見えた瞬間だった。

 その後、第6話で結婚観の違いからミナトと破局し、誰にも寄りかかれない状態になった鮎美は、逃げ場のない状態で初めて本気で自分と向き合うこととなる。勝男との再会の中で「ちっとも変われなかった。誰かに頼ってばかりで自分がどうしたいかもわからなくて……バカみたい」とこぼす姿は、彼女がようやく自分を知ろうとし始めた証である。

 そんな彼女に勝男が「鮎美はダメじゃない」と伝える場面は、二人の想いが重なる名シーン。ここまで力強く自分を認めてくれる人がいることは、何よりも幸せなことだ。

 そこから鮎美は、勝男の好きな黒髪でも渚の勧めるピンクでもなく、初めて自分の好きな色に髪を染め直す。そしてミナトに別れと感謝を伝える姿は、もう以前の鮎美ではない。髪色を「ちゃんと自分で決めたから」と胸を張るその表情には、確かな自我が宿っていた。その姿に視聴者からは、「頑張れ鮎美」「応援したくなる」と言った声も上がっていた。

 勝男、ミナト、渚という3人の影響を受けながら、鮎美は少しずつ誰かのための自分を卒業し、自分らしく生きる道へと歩き出している。あるがままの自分になれた時、同じように生まれ変わった勝男とどう向き合うのか、今後の展開が楽しみだ。

 悩める鮎美を演じる夏帆さんは、こうした役柄は本来あまり得意ではなく、撮影序盤は自分と重ねることが難しかったと後のインタビューで語っている。だが、自分探しをする鮎美を表情一つ一つまで繊細に、柔らかく体現したその演技はまさに鮎美そのものだった。

 夏帆さん自身、「きっとこの役は自分にとってターニングポイントになる」と語っていたが、その言葉通り、鮎美は彼女の新たな魅力を引き出している。竹内涼真さんが演じる主人公・勝男をはじめキャスティングが見事な同作だが、夏帆さん演じる鮎美のハマり具合もまた人気の理由のひとつだろう。

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