ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』視聴者の応援を呼ぶ「鮎美」の繊細な成長物語…ハマリ役・夏帆が魅せる新たな一面の画像
ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(C)1995-2025, Tokyo Broadcasting System Television, Inc. All Rights Reserved.

 TBS系火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』が、TVerのお気に入り登録数165万人を超えて歴代ランキング5位に上昇し、ますます勢いに乗っている。 

 モラハラ気質だった主人公・勝男は今では人の気持ちに寄り添える男へと変わり、元カノである鮎美もミナトと別れて再びシングルに。二人の復縁を願う視聴者の期待が高まる中、18日には待望の第7話が放送された。

 第7話は、友人の結婚式に出席するため、二人がそれぞれ大分へ帰郷するエピソード。久々に帰った実家では、両家の親が勝手に交わした約束のせいで、別れた事実を言い出せないまま顔合わせの食事会が開かれることになってしまう。さらにはモラハラ勝男を育てた両親の問題も見えてきて……といったストーリーが描かれた。

 同作は勝男を演じる竹内涼真さんに高い評価が寄せられており、視聴者の間で「新境地」といった声が上がっているが、その相手役である鮎美役を務める夏帆さんもかなりのハマり役だ。

 勝男の成長とともに物語ではこれまでに鮎美の内面の変化も描き続け、自分を見失っていた彼女に少しずつ新しい風が吹きはじめており、放送後のSNSでは彼女を応援する声も上がる。今回は、そんな鮎美の変化に焦点を当て、成長の過程を追ってみよう。

■すべては幸せな家庭を持つため…人に合わせて生きる人生

 『じゃあ、あんたが作ってみろよ』では、モラハラ思考の主人公・海老原勝男が夏帆さん演じる山岸鮎美に振られ、自分と向き合いながら変わっていく姿が描かれる。勝男の変化のスピード感に視聴者の目が奪われがちだが、本作は鮎美の再生の物語でもある。

 鮎美は、控えめに見えて実は誰よりも頑張り屋な女性だ。大学時代に勝男と交際をスタートさせ、長い間彼の無神経な発言や行動に耐え続けてきた点からみても、我慢強い性格であることは明らかだろう。しかし、その我慢強さは同時に自分の感情を後回しにするということでもあった。

 第2話では、鮎美が極端な恋愛観に至った理由が“家族”にあることが描かれる。幼い頃から、母は父への憎しみを隠さず、姉は奔放に生き、家庭には不協和音が漂っていた。そんな環境で育った鮎美は、いつしか安定した家庭で愛され続ける人生を夢見るようになり、その理想を叶えるために自分を削る恋愛を選ぶようになっていったのだ。

 本来ならそこで「一人で生き抜く強さ」を求めてもおかしくないのに、鮎美が選んだのは「モテる女になる」という道。男性に選ばれ、幸せにしてもらうことを軸に置いた瞬間から、彼女は自分の人生の主導権を人に委ねていたのかもしれない。

 とはいえ、鮎美ほど相手の色に染まる恋愛は極端で、彼女に女友達がいなかった理由の一つもそこにある。他人から見れば危うく映る恋愛観でもあるのだ。しかし、ここまで突き詰めてしまえるのは、ある意味で心が強い証なのではないだろうか。

 一方で、相手が喜びそうなことを率先して行動し、感謝されることで満たされる暮らしはどこかで無理を重ねてしまっている側面もある。見ようによっては鮎美の生き方は賢い戦略に見えるものの、それが本当に自分のためになっているのかは疑わしい。

 そんな違和感に気づくきっかけとなったのが、勝男と別れた後に美容師・渚から投げかけられた「好きな食べ物は? 鮎美さんにとっての普通って?」という問いだった。

 この言葉を機に、鮎美は自分自身を見失っていたことに気づく。勝男が「女性は家で料理を作って待つもの」といった古い価値観に縛られていたように、鮎美自身もまた恋愛バイブル的な思考に囚われていたのである。

 だからこそ、鮎美が殻を破り本当の自分を取り戻していく姿は、勝男の成長と同じくらい鮮烈だ。彼女が自分を大切にする選択を覚えていくその過程こそ、本作が描くもう一つのテーマといえるだろう。

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