テレビアニメ『機動戦士ガンダム』から続く、宿命のライバル「アムロ・レイ」と「シャア・アズナブル」。そのふたりの戦いの決着が描かれた劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で、アムロが搭乗する機体「νガンダム」は、数あるモビルスーツ(MS)の中でもトップクラスの人気を誇る。
そういうファンの後押しもあってか、劇中では短い活動期間だったνガンダムにもかかわらず、さまざまなバリエーション機が存在。試作型や重武装型、発展型や量産型など、MSのバリエーションとしては一通り押さえられている。
そんな人気機体であるνガンダムの多彩なバリエーションの中から、『逆襲のシャア』やその他のアニメ作品と特につながりが深い機体を紹介しよう。
■シャアに酷評された「情けないMS」の正体!?
劇場版『逆襲のシャア』にも描かれているが、νガンダムは「サイコフレーム」と呼ばれる新素材を取り付けることで完成に至った。この技術はシャアが意図的にアナハイム・エレクトロニクス社に横流ししたものであり、その理由についてシャアは「情けないMSと戦って勝つ意味があるのか」と語っている。
このサイコフレームを取り付ける前の運用テスト段階のνガンダムは、通称「ファーストロット」と呼ばれ、アプリゲームやガンプラなどでカラーリングや機体設定を見ることができる。
機体カラーはテスト機らしくグレーと白という地味な色でまとめられ、その元ネタとされているのは、劇場版『逆襲のシャア』の特報映像に登場するνガンダムである。映像では、フィン・ファンネルがついていないグレーのνガンダムが、頭部バルカンを連射する様子が描かれていた。
そして書籍『マスターアーカイブ モビルスーツ RX-93 νガンダム』(SBクリエイティブ)によれば、ファーストロットの稼働テストは最低限にとどめられて期間も短縮。最終的な仕様に合わせるために分解、再組み立てされる際にサイコフレームが実装されたことが記載されている。
シャアは「情けないMS」と評したが、アムロが基礎設計から携わったνガンダムのファーストロットの運用テストに立ち会った連邦高官や技術者たちは、その完成度の高さに衝撃を受けたともいわれている。
■後のガンダムに引き継がれたコンセプト
『逆襲のシャア』の模型誌企画「CCA-MSV(逆襲のシャア モビルスーツバリエーション)」には、「νガンダムHWS(ヘビーウェポンシステム)」という機体設定がある。いわばνガンダムを“フルアーマー化”するプランであり、追加装甲と武装を強化した形態だ。
長距離狙撃を可能とする「ハイパー・メガ・ライフル」や、大口径大火力のメガ粒子砲を備える「ハイ・メガ・シールド」を装備しており、追加装甲そのものにスラスターを内蔵させることで重量増加による機動性低下を抑制するという工夫がなされていた。
また『総解説 ガンダム辞典 Ver.1.5』(講談社)の記述によれば、本体のフルサイコフレーム化や、肩部に装備したミサイルのサイコミュ化まで検討されていたという。しかし技術的な課題や、シャアの反乱が早期決着したため、その計画自体が立ち消えになった。
だが、このνガンダムのプランにあったフルサイコフレーム化のアイデアは、後の「UC計画」に引き継がれ、νガンダムHWSこそがユニコーンガンダムの始祖ともされている。
さらにはミサイルのサイコミュ化のアイデアも、後年のマフティー動乱時に活躍する「Ξ(クスィー)ガンダム」や「ペーネロペー」が搭載する「ファンネル・ミサイル」に受け継がれている。
これらのことを踏まえると、νガンダムHWSが後のガンダム開発に及ぼした影響の大きさが分かるだろう。


