■咄嗟にとった優しい判断「禰󠄀豆子に竹筒をくわえさせる」冨岡義勇
作中、竈門兄妹が初めて出会った鬼殺隊士は、水柱・冨岡義勇だった。彼は鬼に変貌したばかりの禰󠄀豆子が炭治郎に襲いかかっているところを発見し、背後から攻撃を仕掛けている。
咄嗟に禰󠄀豆子を庇う炭治郎に対し、「なぜかばう」と問いかけた義勇。「妹だ 俺の 妹なんだ」と必死に訴えるも、彼の腕の中には唸り声をあげ、今にも暴れ出しそうな禰󠄀豆子の姿があった。そこで義勇は容赦なく禰󠄀豆子を炭治郎から奪い取り、その頸を斬ろうとする。
炭治郎は、禰󠄀豆子が誰も食べていないことや、家には自身が嗅いだことのない“もう一つの匂い”があったことを必死に訴え、土下座をしながら「どうか妹を殺さないでください」と懇願。
その炭治郎の姿に義勇は「生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」と激昂し、叱責した。これは、鬼を前にした彼の甘さを指摘し、家族の仇を討つ覚悟があるのかを推し量るための行動だった。
義勇の言葉に覚悟を決めた炭治郎は、気絶させられながらも一矢報いることに成功する。さらに、意識を失った兄を禰豆子が守ろうとした行動を見て、義勇は「こいつらは何か違うかもしれない」と、2人に可能性を見出した。そして彼は禰󠄀豆子を気絶させると、人間を襲わないようにと手持ちの竹筒を口枷としてくわえさせ、炭治郎が目覚めるのを待ったのである。
鬼を斬ることを使命とする鬼殺隊士でありながら、炭治郎の命懸けの言葉に耳を傾け、禰󠄀豆子を守るための行動を取った義勇。その冷静な判断力と内に秘めた優しさに胸が熱くなる。事実、この義勇の行動が竈門兄妹の運命を大きく変えることとなった。
さらに義勇は、炭治郎が隊律違反で他の柱たちに糾弾された際にも、育手の鱗滝左近次とともに、彼らを守っている。お館様こと産屋敷耀哉に宛てた鱗滝の手紙には「もしも禰󠄀豆子が人に襲いかかった場合は 竈門炭治郎及び鱗滝左近次 冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します」と記されており、義勇がこの2人のため、命を懸けていることが示されている。
そう考えると、竈門兄妹が最初に出会った鬼殺隊士が義勇であったことは、不幸中の幸いであったと言えるだろう。
斬撃の中でも痛みを感じさせない慈悲の技を選んだ炭治郎、苦しまずに死ねる毒を調合していたしのぶ、そして、鬼である禰豆子を生かす道を選んだ義勇。鬼に対して見せた慈悲はさまざまだった。
しかし炭治郎が「干天の慈雨」を使用したのは前述した1回のみであり、鬼との戦いは物語が進むにつれて熾烈を極めていく。“優しさ”を見せる場面すらないほどの過酷な戦いが、『鬼滅の刃』の世界での現実でもあるのだ。
そんな本作の最終局面、「無限城編」での決戦がどのように描かれるのか。ぜひ劇場で見届けたいと思う。


