シャア、フラウ、ベルトーチカ、セイラ…『ガンダム』アムロ・レイが語った「最後の言葉」とそこから見える「本心」の画像
DVD版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(バンダイビジュアル) (C)創通エージェンシー・サンライズ

 テレビアニメ『機動戦士ガンダム』(1979年開始)の放送から40年以上が経ち、同シリーズはいまだに新作アニメが放送されるほどの人気を集めている。とくにルーツでもある『機動戦士ガンダム』は伝説的な人気を誇り、「原点にして頂点」と評価するファンも少なくない。

 その人気の理由のひとつに「アムロ・レイ」という主人公の存在がある。初代『ガンダム』では、周囲の人間とぶつかりながらも成長していく姿で多くの視聴者の心をつかんだ。

 続編『機動戦士Zガンダム』では苦悩しながらも後進を導く役割を担い、劇場版『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にて極光とともに姿を消したところで彼の物語は幕を閉じる。

 超人的なパイロット能力、人柄、取り巻く環境など、彼にはさまざまな魅力があるが、そのキャラクター性をひと言で表すのは難しい。

 そこで今回はアムロの「人となり」を知るひとつの手がかりとして、消息不明になる前のアムロが誰とどのような会話を交わしてきたのか、「残した言葉」に焦点を当てながら、あらためて振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■宿命のライバルと交わした最後のセリフ

 本当の意味での「アムロの最後の会話」が描かれたのは『逆襲のシャア』のラスト。宿命のライバルであるシャア・アズナブルと交わしたのが、映像作品におけるアムロの最後の会話シーンとなった。

 モビルスーツ戦において、アムロはシャアが乗るサザビーを圧倒したが、残念ながら分断されたアクシズの破片が地球へと落下し始める。それでも諦めないアムロは、愛機「νガンダム」でアクシズを押し返そうとする。

 そのアムロの行動を知ったシャアは「バカなことはやめろ」「これはナンセンスだ」と非難する。しかし、地球連邦軍やネオ・ジオンのモビルスーツまでアムロの行動に同調するかのようにアクシズを押し始めた。

 摩擦熱や大きな負荷がかかって爆発する機体も出る中、アムロは周囲のパイロットに「離れろ」と叫ぶ。そして、そのときνガンダムに搭載されたサイコ・フレームが周辺に集まってきた人々の意思と“共振”を起こす。

 アムロの想いを具現化するかのように、サイコ・フレームの光はアクシズに取り付いていたモビルスーツたちを弾き飛ばしていく。そこに残されたのはアムロのνガンダムと、シャアのいる脱出ポッドのみとなった。

 その光の中でシャアは「この温かさを持った人間が地球さえ破壊する」といい、アムロは「だから世界に人の心の光を見せなければならない」と返した。人類の革新を急いだシャアと、人の可能性を信じるアムロによる対照的な問答が続く。

 そして、最終的にシャアは「ララァ・スンは私の母になってくれるかもしれなかった女性だ。そのララァを殺したお前に言えたことか」と本音を吐露。それにアムロが「お母さん? ララァが?」と返したのが、ふたりの交わした最後の言葉となった。

 直後、アクシズを包みこんだ緑色に輝く光は宇宙空間に大きな広がりを見せ、その煌めきはまるでララァの姿のようにも見えた。アムロとシャアの最後の会話は、一年戦争時に起こった悲劇にまつわる内容であり、彼らにとってララァという存在がいかに大きいものであったかを象徴するシーンとなった。

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