1983年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が始まった『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)は、世界中で人気を誇る伝説的な漫画だ。
本作は主人公・ケンシロウをはじめとする男たちの熱き戦いが展開される作品だが、その一方で、ケンシロウの前に現れてはあっけなく散っていく「ザコキャラ」たちの存在も見逃せない。
彼らの個性的すぎる断末魔や散りざまは、作品の大きな魅力の1つでもある。たとえば「汚物は消毒だ~!!」と言って、火炎放射器を村人に放っていたモヒカン男が、ケンシロウによって自身の炎に包まれてしまう様子などは、今も多くの読者の記憶に刻まれていることだろう。
作中での出番こそ短いものの、あまりにも悲惨な最期を遂げたザコキャラは他にも存在する。その死に方はあまりにもみじめであり、ケンシロウの強さを際立たせるための存在といえるだろう。ここでは、そんな哀れなザコたちの印象的な姿を紹介したい。
※本記事には作品の内容を含みます
■時限爆弾のように頭が…「おれの体がメッセージになる」と伝えたジャッカルの子分
物語前半のエピソード「狂犬ども死すべし!の巻」に登場するザコは、ケンシロウの北斗神拳によって、まるで時限爆弾のように頭が爆発してしまう。
野盗集団のボス・ジャッカルは、ケンシロウを慕って旅を共にする少年・バットの育ての母であるトヨを殺した憎き相手だ。その手下に遭遇したケンシロウは、ジャッカルの子分の1人に対し、「きさまには メッセンジャーになってもらおう…」と告げ、こめかみの秘孔をつく。
その後、ジャッカルの元へ逃げ帰ったザコは、「おれの体がメッセージになると」と伝えた直後、頭が不気味に変形し、ジャッカルの目の前で爆発してしまうのである。
すさまじい怒りをザコの体を通してメッセージにしたケンシロウ。それにしても、ジャッカルの元にたどり着いた瞬間、頭が爆発するよう仕掛けているのが凄い。ザコがジャッカルに会うであろう時間を正確に計算して秘孔を突いたのか、それともザコが特定の言葉を発したら爆発するよう仕掛けたのか……その詳細は定かではないが、ともかく恐るべし北斗神拳である。
頭を爆発させられたザコにとってはたまったものではないが、ケンシロウの怒りを届けるためのメッセンジャーとしての役割は見事に果たしたといえるだろう。
■「おれじゃないるれ」ケンシロウにノコギリで頭を引かれたザコ
次は、その独特な断末魔で有名になった名もなきザコを紹介したい。
「死闘への旅だち!の巻」にて、ケンシロウは悪事を繰り返す義兄・ジャギの行方を追っていた。その道中で会ったのが、村人を虐げるジャギの手下である。
そのザコは、村人を地面に生き埋めにして頭だけを出し、他の村人にノコギリで首を引かせるという残虐な行為を強要していた。
そこに現れたケンシロウは、ザコから渡されたノコギリを逆にそのザコの頭に振り下ろす。すると、「あ…あら」「……バカ……おれじゃないるれ…」と、意味不明な言葉を発するザコ。抵抗する間もなく、さらにノコギリを引かれ「ぱっびっぶっぺっぽおっ」の奇妙な断末魔とともに絶命するのであった。
残酷で衝撃的な死にざまではあるものの、このザコの断末魔はかなりシュールで読者に強い印象を残した。これをきっかけに『北斗の拳』におけるザコキャラの独特な断末魔が、作品の定番になったと言えるかもしれない。
いずれにせよ、村人をひどいやり方で苦しめるザコは、ケンシロウによってそれ以上の苦痛を味わって死んでいくのである。


