漫画やアニメを原作とした実写化映画では、キャラクターの再現度が作品の評価を大きく左右するといっても過言ではない。原作ファンはもちろん、新たに作品に触れる視聴者にとっても、そのキャラクターがいかに“原作そのまま”であるかは、物語へ没入できるかどうかを決める重要なポイントだ。
実写化作品が次々と生み出される中、原作へのリスペクトを胸に、細部までこだわってキャラクターに命を吹き込む女優たちがいる。特に外見などに強い個性を持つキャラクターを演じた際に視聴者にもたらされる衝撃は大きく、時を経てハマり役として語り継がれることも少なくない。
そこで今回は、数ある実写化映画の中でも圧倒的な完成度で視聴者を魅了した女性キャラクターたちを5回にわたってピックアップし、その再現力の高さを振り返っていく。
【第3回/全5回】
■吉岡里帆さんの女郎蜘蛛に目が釘づけ
実写化作品では、演技はもちろん、原作のキャラクターが身に着けている衣装を完璧に着こなす必要がある。しかし、漫画のキャラクターは奇抜なデザインや人間離れしたスタイルが多く、その世界観を落とし込むのは簡単ではない。
その中で、抜群のプロポーションと存在感で原作を凌駕するほどのインパクトを放ったのが、2022年に公開された劇場版『ホリック xxxHOLiC』で女郎蜘蛛を演じた吉岡里帆さんだ。
『ホリック xxxHOLiC』は、漫画家集団CLAMPが2003年に描いた人気作。アヤカシに憑かれやすい高校生・四月一日君尋が、“対価を払えば願いを叶える”という不思議なミセの主・魔女の壱原侑子と出会い、“アヤカシを見えなくする”願いを叶えるために彼女の元で働きはじめる物語だ。
実写版では四月一日役に神木隆之介さん、侑子役に柴咲コウさんを起用。原作とはストーリーに違いがあるものの、極彩色の使い手・蜷川実花監督による色鮮やかで煌びやかな世界観が幻想的で美しく、新しい『ホリック』を楽しめる作品となっている。
吉岡さん演じる女郎蜘蛛は、四月一日を甘い言葉で誘惑する悪女的な存在だ。原作ではそこまで悪役として描かれていないが、実写版ではラスボス的立ち位置となっており、後半では吉岡さんが物語を大きく動かすキーマンとなっていく。
セクシーさが魅力の女郎蜘蛛を、吉岡さんは徹底的に再現した。原作の女郎蜘蛛はゴスロリ風の衣装が印象的だが、実写版ではボンテージテイストを加えた露出度の高い黒い衣装へとアレンジ。そこに、艶やかな金髪に鋭い眼差しを際立たせる濃いアイメイク、動くたびに揺れるチェーンと網タイツが、艶めかしい魅力を引き立てている。
ほんわか癒やし系なイメージのある吉岡さんが大胆に体をさらけだした姿はファンにも衝撃を与え、公開前に自身のインスタグラムにアップした写真には「誰だかわからなかった」「過去最高のビジュアル!」といった驚きと賞賛の声が相次いだ。イメージを180度変えるこの役柄により、新たな彼女の魅力が開花したといっても過言ではないだろう。
さらに、吉岡さんは演技の面でもこれまでにない挑戦をしている。「セクシーな所作が難しかった」と語る彼女は、役づくりのためにポールダンサーのKUMIさんから動きのレクチャーを受けたという。その真摯な姿勢は蜷川監督にも伝わり、「衣裳合わせのときから気迫を感じた」と高い評価を受けることとなる。
作中では、全身から色気を漂わせてしなやかに体をくねらせながら、蜘蛛という捕食者のごとく四月一日に迫るシーンが強烈な印象を残す。さらに、本来の狂気性を解き放つ戦闘シーンでは危険な色気がいっそう際立ち、蜷川監督の極彩色の映像世界の中で女郎蜘蛛としての存在感がひときわ輝きを放っていた。
本作で吉岡さんは、妖艶さと危うさを兼ね備えた女郎蜘蛛を通して、演技の幅の広さを示した。大胆なビジュアルと体当たりの演技でこれまでのイメージを一新し、観る者の心を惹きつける女優としての存在感を改めて示したと言えるだろう。


