推理漫画では、主人公が警察に代わって難事件を解決していく流れが定番である。ほとんどの場合主人公は若く、豊富な知識や柔軟な発想力、研ぎ澄まされた推理力で事件に挑む。常人離れした記憶力で会話の矛盾を突き、独自の視点から推理を展開し、やがて犯人にたどり着く……。
しかし、そんな無敵とも思える主人公が、時には事件の容疑者になってしまうことがある。犯人の策略にはめられたり、偶然現場に居合わせたことで疑われたりと状況はさまざまだ。そうした絶体絶命の状況の中、いかに身の潔白を証明するかが、彼らの腕の見せどころである。
今回は、人気推理漫画の中から、主人公が容疑者になってしまうエピソードをいくつか紹介していこう。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■まさかの真相に驚愕した「殺人犯、工藤新一/新一の正体に蘭の涙」
まず紹介したいのが、青山剛昌氏による『名探偵コナン』(小学館)から。本作の主人公といえば江戸川コナンの姿をした工藤新一だ。そんな新一が殺人容疑をかけられてしまう回があった。それがコミックス62巻収録の「殺人犯、工藤新一/新一の正体に蘭の涙」である。
事件のきっかけは、新一が1年前に推理したある村での夫婦死亡事件である。新一は一家心中と推理したのだが、それがミスだったのではという噂がささやかれるようになる。
その「推理ミス」を指摘する手紙が服部平次に届き、当時の現場に彼と毛利小五郎、毛利蘭、遠山和葉、コナンが訪れる。しかしそんな中、コナンが忽然と姿を消し、それと入れ替わるように記憶を失った新一が発見された。
なぜ新一が記憶喪失になり、この場にいるのか。誰もが疑問に思う中、現場を訪れていた新聞記者の女性が血まみれになった姿で発見される。そして現場には、返り血を浴びた新一の姿が……。
状況的に新一が犯人としか考えられないが、服部は彼の無実を信じて調査を進め、やがて意外な真相にたどりつく。
現場にいた新一は偽物で、その正体は1年前の新一の推理ミスを恨む人物だった。なんと彼は整形手術をして新一に成りすまし、殺人を犯してその罪を被せることで、彼を社会的に抹殺しようと企んでいたのだ。
しかし、コナンや服部によってすべての計画は暴かれ、おまけに1年前の事件が推理ミスではなかったことも判明する。勘違いのために顔まで変え、人生を棒に振ってしまったのは気の毒ではあるが、だからといって無関係の人を殺そうとしたのはさすがにやりすぎだろう。
■意外と容疑者になりがち?「金田一少年の殺人」
続いては、原作:天樹征丸氏・金成陽三郎氏、作画:さとうふみや氏による『金田一少年の事件簿』(講談社)の「金田一少年の殺人」だ。この事件は、あるベストセラー作家の未発表原稿をめぐって展開されていく。
作家は原稿をある場所に隠し、暗号の謎を解いた者にその出版権を与えると宣言した。その謎解きを依頼された主人公・金田一一だったが、会場で当の作家が殺害される事件が発生する。
その第一発見者であり、彼の他に現場に誰かが入った形跡がなかったことから、金田一は容疑者として逮捕されてしまう。
金田一は自身の潔白を晴らすため連行中に逃亡し、真犯人を見つけようと奔走する。しかし犯人は金田一の動きを先読みし、関係者を次々と殺害。そのすべての罪を逃亡中の金田一になすりつけようとした。
絶体絶命の金田一だったが、明智健悟警視と密かに連携し、彼に撃たれて死んだふりをする作戦に出る。これにより油断した犯人が原稿の隠し場所へ向かったところを待ち伏せし、逮捕に成功した。
金田一は、この事件以外にも「金田一少年の決死行」で犯人に仕立て上げられている。その時はライバル・高遠遙一からの挑戦という形だったが、こう何度も容疑者にされるのは不幸体質としかいいようがない。


