■語り草となっている描写の数々
作中で交通事故が多発することも、『キャプテン翼』の大きな特徴である。第1話で翼が車に轢かれそうになる場面に始まり、若島津の負傷による欠場、岬の左足負傷、日向の父親の事故死、ステファン・レヴィン(スウェーデン代表)の恋人の事故死、松山光の恋人の事故による昏睡状態など、物語の重要な局面で交通事故が頻発する。これはファンの間では有名な話で、「事故が多すぎる」とイジられることも少なくない……。
翼の独特な「くん付け」の使い分けも、ファンの間で議論を呼んできた。翼は岬、若林、日向、石崎らを「くん付け」で呼ぶが、松山は途中から呼び捨てになるなど、基準が明確ではない。その一方で、翼自身が苗字で呼ばれることはほとんどなく、実況アナウンサーさえも「翼くん」と呼ぶのがなんとなく気になる。とはいえ、単に語感の良さや親しみやすさの演出のためなのだろう。
ちなみに、修哲のメンバーが同級生の若林を「さん付け」で呼ぶのも不自然だったが、その理由は『MEMORIES』で明かされた。先にレギュラーとなった若林が同級生に発破をかける意味で「さん付け」を強要したのが始まりで、それが定着したという。ただし、森崎有三だけは純粋な尊敬の念から「さん付け」をしている。
多くの読者が納得いかないのが、翼のフル代表未招集問題だろう。翼は15歳でフル代表に初招集され、ブラジルのグレミオ(アニメ版ではパラグアイ)との親善試合に途中出場し、ハットトリックを達成。わかりやすすぎる結果を残した。
その後、ブラジルのサンパウロFCからスペインのFCバルセロナへとキャリアアップ。世界的クラブのエースとして活躍しているにもかかわらず、フル代表に呼ばれる描写は長らくなかった。15歳にして西ドイツのハンブルグでプロ入りした超逸材の若林も同様で、物語の進行上の都合とはいえ、リアリティを求める読者にとっては大きな疑問となった。
19歳で結婚し二児の父親となった翼に対し、サッカー協会側が子育てに配慮して招集を見送ったのだろうか!?
劇中における非現実的な必殺シュートも『キャプテン翼』の魅力である。とりわけ立花兄弟の「スカイラブ・ハリケーン」は、多くの子どもたちが学校でマネをしたものだった。だが、味方の跳躍力を補助する発射台となるプレーは現実のサッカーでは反則や危険行為にあたり、それを阻止しようとゴールポストに登るのもルール違反。
ゴールポストに登るといえば、日向の初登場シーンが印象的だ。南葛SCの紅白戦の最中、いつの間にか若林が守るゴールポストの上に座っていたが、脚立もなしにどうやって登ったのだろうか。貧しい家庭環境ながら静岡まで偵察しに来ただけに、何としても爪痕を残したかったのかもしれない。
『キャプテン翼』ではこのように、考察の余地がある点やツッコミどころなどの枚挙にいとまがない。しかし、純粋なサッカーの物語だけでなく、こうした“謎”や“不思議”を含めて楽しめることも、『キャプテン翼』が40年以上にわたって愛され続ける理由の1つであろう。


