田辺桃子さん、横田真悠さん、林芽亜里さんがトリプル主演を務めるドラマ『推しの殺人』(読売テレビ・日本テレビ系)。本作は、第22回『このミステリーがすごい!』大賞で文庫グランプリを受賞した、遠藤かたるさんの同名小説を原作としている。ドラマ化にあたり、原作の骨格を保ちつつ大胆な構成変更が施されているのが特徴だ。
ストーリーの変更に加え、オリジナルキャラクターも数多く登場し、原作ファンの間でも「予測不能」「スケールアップしたサスペンス」などと話題を呼んでいる。中でも特に注目を集めているのが、増田貴久さんが演じる弁護士・矢崎恭介の存在だ。
※本記事は『推しの殺人』第5話までの内容を含みます。
■原作にはないオリジナル要素の数々
物語の中心は、大阪を拠点に活動する地下アイドルグループ「ベイビー★スターライト」(通称ベビスタ)――高宮ルイ(田辺さん)、早川テルマ(横田さん)、沢北イズミ(林さん)の3人である。
人気の低迷、メンバー間の不和、事務所のセクハラ体質という現実に追い詰められていた彼女たちは、ある夜、所属事務所の社長・羽浦悟(田村健太郎さん)を殺害してしまう。単独犯だった原作と違って、ドラマでは「共同殺人」へと変更。3人の“運命共同体”としての結びつきがより強調されている。
そして、ドラマ版のスケールを大幅にアップさせているのが、羽浦殺しとは別に発生している「未解決連続殺人事件」という横軸だ。
さらに、ベビスタの元メンバー・駒場ミチル(なえなのさん)、ルイの幼馴染で刑事の望月直哉(曽田陵介さん)、裏社会の実業家・河都潤也(城田優さん)の妻である麗子(加藤ローサさん)、そして河都の大学の同級生でもある弁護士・矢崎恭介(増田貴久さん)といったオリジナルキャラクターも登場。彼らがどのような役割を担うのか、原作読者も先が読めない展開となっている。
なかでも、特に視聴者の注目を集めているのが矢崎。だが、第5話時点ではあまり登場シーンは多くない。
彼には、「国選弁護人」という細かな設定がある。いわゆる“敏腕エリート”ではなく、社会の隙間で依頼人のために奔走する現実的な弁護士像だ。そのため、衣装もビシッとしたスーツではなく、どこかカジュアルな印象を与えるものである。
衣装や小物にこだわるという増田さんは、インタビューで「綺麗めなカジュアルで衣装を揃えてもらいました」「(矢崎は特別な用事がなければ)シャツもジャケットも着てないんじゃないか、なんならサンダルとかを履いているかもしれない」と語っており、役作りへの並々ならぬ熱意を見せている。
作中では、矢崎が麗子に恋心を抱いているように見える描写もあり、その微妙な感情の揺れがどこか不穏だ。
何よりも見逃せないのが、増田さんの名前がクレジットの最後に置かれている点である。そもそも人気アイドルグループ・NEWSのメンバーでもある彼が、ただの“いい人”や“チョイ役”で退場するとは考えにくい。今後のエピソードで、その存在感がいっそう増していくことは間違いないだろう。
全13話の壮大スケールで展開されるドラマ『推しの殺人』。原作にないオリジナル要素が多数盛り込まれており、誰にも読めない予測不能のストーリーから目が離せない。
SNSでは「矢崎=黒幕説」をはじめとしたさまざまな考察も飛び交っている。彼の“正体”が明かされるとき、原作とドラマの相違点が見事につながり、驚きの展開が待っているのかもしれない。


