■まさかの描写に戦慄…吸血鬼化した母親

 吸血鬼として蘇ったディオは、人間を屍生人(ゾンビ)に変える能力を使い、瞬く間に勢力を拡大していった。

 多くの場合、戦闘要員として男性が駆り出されたが、ときには女性も屍生人へと変貌させられ、おぞましい姿を晒している。

 なかでも強烈な描写で読者にトラウマを与えたのが、幼い赤ん坊を抱いた母親が登場するワンシーンだろう。

 ディオのもとに連れてこられた一人の女性。その腕に、まだ幼い我が子を抱きかかえていた。

 震えながら涙を浮かべるその女性は、自身の命と引き換えに、せめて子どもだけでも助けてほしいとディオに懇願。意外にもディオはこの要求をすんなり受け入れ、子どもには手をかけないことを約束するのである。

 思いがけない優しい一面……に見えたのだが、数々の悪事に手を染めてきたディオが、素直に彼女の言うことを聞くわけがなかった。

 ディオはその母親を屍生人に変貌させると、彼女自身に我が子を襲わせたのである。優しい風貌だった母親は目を見開き、牙をむいた異形の姿となり、命を懸けて守ろうとしていた大事な我が子を、躊躇なく食い殺してしまう。

 赤ん坊が犠牲になる瞬間こそ直接的に描かれなかったが、それでも彼女の牙が我が子の肌を引きちぎっている絵面は、実にショッキングである。「あたしィィィの赤ちゃあァァァん!」というおぞましい雄叫びをあげる姿は、まさに怪物のそれであった。

 無力な赤ん坊が犠牲になるという痛ましい状況に加え、それを守り抜こうとしていた女性の愛情すら弄んだディオの非人道的な行為に、底知れぬ恐怖を感じさせられたシーンである。

 

 個性的なキャラクターや手に汗握る頭脳戦はもちろんのこと、随所にちりばめられたホラー描写もまた『ジョジョの奇妙な冒険』の醍醐味の一つだろう。

 今回紹介したシーン以外にも、第1部には衝撃的な場面が数多く存在する。容赦なく繰り広げられるトラウマシーンは強烈でありながら、読者を物語の世界に深く誘い、虜にさせる。

 ぜひこの機会に、あなたも読み返してみてはいかがだろうか。

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