1986年より『週刊少年ジャンプ』(集英社)にて連載が開始された『ジョジョの奇妙な冒険』は、掲載誌を変えながら、今なお新たな物語が描かれ続けている大人気バトル漫画である。
荒木飛呂彦氏の代表作で、特殊能力を駆使した頭脳戦もさることながら、どこかサスペンス性を感じるホラーテイストな作風も大きな特徴だ。
特に、連載開始当初の第1部『ファントムブラッド』はホラー描写がかなり濃厚で、思わず目を背けてしまいたくなるようなショッキングな展開が繰り広げられていく。
シンプルに残酷なシーンも多く、多くの読者を震え上がらせた『ジョジョ』第1部の恐怖描写の数々を見ていこう。
※本記事には作品の内容を含みます
■生きたまま焼かれて…愛犬・ダニーの最期
第1部では、主人公であるジョナサン・ジョースターのもとへ、後の宿敵となるディオ・ブランドーが養子としてやってきたことから物語が始まる。
貧困のなかで育ったディオは、まだ子どもでありながら大富豪であるジョースター家を乗っ取ることを企て暗躍していく。
ディオはジョナサンに対し、ことあるごとに陰湿な嫌がらせを仕掛け、ついにはジョナサンの想い人であるエリナ・ペンドルトンにまで魔の手が及んでしまう。
普段は穏やかで優しいジョナサンも、ついに激昂。怒りをあらわにし、ディオと真っ向から殴り合いの喧嘩を仕掛けた。
最初こそジョナサンを舐め切っていたディオだったが、彼が内に秘めていた思わぬ爆発力に圧倒され、幾度となく殴り飛ばされることとなる。
ジョナサンの父、ジョージ・ジョースターI世の介入でなんとかその場はおさまったが、自身のプライドを傷つけられたディオの怒りは到底おさまるものではなかった。
そんなディオが目を付けたのは、ジョナサンが幼少期から大切にしていた愛犬・ダニーだった。なんとディオはダニーを木箱の中に拘束し、屋敷の焼却炉へ放置。何も知らない召し使いがそこに火を付けてしまい、生きたまま焼き殺させたのである。
針金で口を縛られたダニーは鳴き声も上げられず、猛火に焼かれてもがき苦しんだ末、絶命してしまった。
愛犬のむごい死にジョナサンは深く絶望するのだが、その壮絶な死にざまを目の当たりにした多くの読者も、思わず言葉を失ったことだろう。
生きながらにして焼かれるという描写も強烈だが、やはり戦慄してしまうのは、このような残虐な行為を涼しい顔をしてさらりとやってのけたディオの冷酷な本性だ。最後は自身の手を汚さず、他人に実行させるべく画策した点も、ディオの悪としての狡猾な一面を感じざるをえない。
■偉大なる師・ツェペリの残酷すぎる結末
時を経て、たくましい青年へと成長したジョナサンとディオ。だが、ジョースター家を乗っ取る計画が露見してしまったディオは、ついに最後の手段に打って出る。彼はアステカ文明の古代遺物・石仮面の力によって不死身の吸血鬼へと変貌を遂げ、怪物として人間たちに牙をむいたのだ。
ここから、ジョナサンとディオの本格的な戦いが始まっていくのだが、戦いが激化したこともあり、物語の強烈なホラー描写もさらに加速していく。
そのなかでも、ジョナサンの師として活躍したウィル・A・ツェペリの最期は、あまりにも苛烈な描写で読者を震え上がらせた。
飄々とした頼もしい波紋の師として活躍したツェペリ。その彼を襲った悲劇は、ディオの配下である巨漢・タルカスとの一戦で訪れる。
かつて師から告げられた、自身の死にざまについての予言を思い出したツェペリは、タルカスと対峙するこの状況が予言通りであることを悟り、戦慄する。
迷いを振り払い、果敢に挑んでいくツェペリだったが、健闘むなしくタルカスの放つ技の餌食になってしまう。タルカスの操る巨大な鎖によって胴体を締め上げられたツェペリは、なんと上半身と下半身を真っ二つに切断されてしまうのだ。
鎖で無理やり肉体を引きちぎられるという、なんとも痛々しい描写はもちろん、これまで師として活躍してきたツェペリが敗北するという事実に、多くの読者が絶望したことだろう。
あまりにも残酷な結末であったが、ツェペリが死の間際に託した力はしっかりとジョナサンに受け継がれていくこととなる。


