■勝利の代償に“宇宙一巡”の結末『ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン』

 最後に紹介するのは、『ジョジョの奇妙な冒険 第6部 ストーンオーシャン』。シリーズ初の女性“ジョジョ”、空条徐倫を主人公に据えた第6部である。

 彼女たちの前に立ちはだかるのは、時を加速させるスタンド「メイド・イン・ヘブン」を操るプッチ神父だ。終盤、その圧倒的な力の前に仲間たちは1人、また1人と散っていく。

 まず、頼れる仲間だったフー・ファイターズが消え、ウェザー・リポートは長きにわたる宿命を断ち切るように散る。さらにエルメェス・コステロ、ナルシソ・アナスイ、そして父・空条承太郎までもが命を落とす。仲間の死が重なるたび、物語は“希望の終焉”へと加速していった。

 最後に残った徐倫も、唯一の希望である仲間の少年・エンポリオ・アルニーニョを逃がすため、自らを犠牲にする。この瞬間、誰もが「ここからどう逆転するのか」と息を呑んだに違いない。しかし、止まらぬ時間の加速の果てに、世界は崩壊し、宇宙そのものが一巡してしまう。

 最終的にエンポリオは、仲間たちの意志を継ぎ、プッチ神父を討ち果たすことに成功。だが、その勝利の代償はあまりにも重かった。旧宇宙は完全に消滅、徐倫たちが存在しない“新たな宇宙”が誕生する。これは、アニメ・漫画史においても極めて異例の“宇宙一巡エンド”と言えるだろう。

 ラストシーンでは、一巡した世界でエンポリオが徐倫たちと瓜二つの人物と出会うという、ささやかな救いが描かれている。それでも、長年にわたりシリーズを追ってきたファンにとって、キャラクターたちが積み重ねてきた歴史が消失してしまったという事実は、どうしても拭いきれない喪失感を胸に残す結末だった。

 

 「凄惨な結末」を描いたこれら3つの物語に共通していたのは、悲劇の中にも確かに“希望”があったということだ。仲間の死や自己犠牲を通じて描かれたのは、絶望そのものではなく、そこから生まれる再生の光だった。

 これらの作品は、誰もが笑って終われる物語ではなかった。だが、彼らが最後まで信念を貫き、大切なものを守り抜いた姿は、今も多くの視聴者の記憶に刻まれているのである。

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