■自由を求め…生みの親を破壊した人造人間17号の冷酷な決断

 「人造人間・セル編」に登場する人造人間たちは、元レッドリボン軍の科学者であり、世界征服を企むドクター・ゲロが生み出した究極の兵器だ。しかし、皮肉なことに、その生みの親であるゲロは、自分が作った人造人間17号に殺されている。

 人造人間17号と18号はかつて人間だったが、ゲロによって改造されたことに反感を抱いていた。それでもゲロがこの2体を起動させたのは、自分に忠実だった19号がベジータによって破壊されたからである。

 しかし、目覚めた17号はゲロの命令に従うどころか、自分たちを制御するコントローラーを奪って破壊し、「また眠らされてたまるか くそじじい」と伝え、最終的にゲロの頭を一蹴し、破壊。

 これは、自分たちを作ったいわば親殺しともいえる残忍な行為だが、17号にとっては自らの自由を奪おうとする“主人”への反逆であり、絶対的な支配からの解放ともいえるだろう。

 当時の17号はベジータをも上回るパワーを持ち、悟空が心臓病で戦線を離脱していたこともあり、地上に敵はいないかに思われた。

 しかし、彼が手にした自由は長くは続かない。その後、17号は、ゲロが生前に残したもう1体の人造人間・セルにより飲み込まれ、吸収されてしまうのだ。結局、反逆で得た自由を、またもやゲロが生み出した創造物によって奪われるという皮肉な顛末を迎えることとなったのである。

 

 このように『ドラゴンボール』には、自分の仲間である目上の者を裏切り、自分が上に立とうとする野心的な悪役キャラクターがたびたび登場している。

 しかし、その計画はことごとく失敗に終わり、いずれも悲惨な末路をたどった。やはり力によって邪魔者を殺し、己の野望を貫こうとする卑怯な考えは、どんな世界においても通用するものではないのだろう。

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