■事前準備は入念に…ガスの罠へ誘導するほどに慎重な一面も
ジャギは狡猾な策略家でもある。先述したように悪評を流すほかにも、拳法だけではこの乱世を生き残れないと悟っていたのか、武器としてショットガンまで所持している。一般的に言えば、素手でも相当強いのに飛び道具まで用意されては、常人ではまず太刀打ちできないだろう。
北斗神拳には、人差し指と中指で矢を掴んで投げ返すという奥義「二指真空把」があるが、ボウガンや弓矢と違って近距離からの散弾銃を防ぐのはさすがに難しいはずだ。それでもケンシロウには勝てないのだが……それでも、盤石にしておきたいという彼の周到さがうかがえる。
さらに、ジャギはケンシロウを地上200メートルのヘリポートに誘い込み、燃料タンクを利用したガスの罠で屋上一帯に炎を巻き起こし、焼き殺そう。その際、自ら燃料タンクの上に陣取り、そこから散々にケンシロウを煽り散らす表情は、まさに悪の権化だった。
しかし、そんな局面でも冷静さは失ってはいない。点火のためのマッチもしっかり用意し、確実に罠を発動させようとしていた。
このような慎重な姿勢は策士としては評価できるところであるが、だが、彼の最大の誤算は、ケンシロウを怒らせすぎたことにある。怒りの拳で地面を砕かれ、ヘリポートは陥没。炎まで鎮火されてしまった。
いや、そもそも自分で“逃げ場がないぞ”と公言していた上、一番危ない燃料タンクに立っている。ジャギ自身はどうやって逃げる気だったのだろう。真っ先に死んでしまうのではないか? せめて相討ちを覚悟した決意の表れだったと思いたいところである。
■シンを陥れるために…考え抜いた口述と時勢を逃さない行動力
ジャギはガスの罠を発動させたとき、ケンシロウに追い打ちをかけるように「シンの魂を悪魔に売らせたのはあ~〜 このおれだあ!!」と、黒幕が自分であったことを自白している。
ジャギは、シンがケンシロウの婚約者・ユリアを諦めきれていないのを見抜き、その心につけ込んだ。
“ケンシロウの甘さでは乱世を生き残れず、ユリアは他の誰かの手に落ちてしまう。そうなる前に奪い取れ”とささやき、「今は悪魔がほほえむ時代なんだ!!」と力説し、シンを口説き落とした。人心を掌握する巧みな話術と、乱世において時勢を逃さない素早い行動力は悪役ながら見事としか言いようがない。
ただ、この告白こそが彼の命取りとなる。悲劇の元凶がジャギであったと知り、ケンシロウの怒りは頂点に。そして、ケンシロウから怒涛の四連弾を喰らってしまい、あんなに願った復讐を果たせぬまま無残にも散っていったのである。
ジャギはケンシロウに復讐を果たすためにさまざまな策を練り、頑張っていたようだ。だが、その結果、すべてが裏目に出てしまい、空回りといえる内容で“涙ぐましい努力”として終わってしまった。
もしもこの努力を次兄・トキのように人々のために使うなど、善良な方向に向けられていたら彼の運命も変わっていたかもしれない。
いや……だが、それではジャギの魅力は失われてしまう。やはり『北斗の拳』史上、最凶の悪役の1人として君臨していることこそが、ジャギの人気を支えているのだ。たとえその努力が泡に消えたとしても、彼の存在は「悪」でいいのだろうな。


