『北斗の拳』屈指の嫌われ者「三男・ジャギ」の涙ぐましい努力 激痛に耐え、策略を立てまくり…の画像
『北斗の拳 究極版』第4巻(徳間書店) ©武論尊・原哲夫

 2026年に放送予定の新作アニメ『北斗の拳 ーFIST OF THE NORTH STARー』において、主人公・ケンシロウの兄弟子である「北斗四兄弟」の登場が解禁された。長兄・ラオウと次兄・トキはもちろんのこと、三男・ジャギの登場も明かされており、往年のファンにとっては待望の知らせであろう。

 新作アニメでは、ラオウ役を楠大典さん、トキ役を最上嗣生さん、そしてジャギ役を高木渉さんという豪華声優陣が務めるというのだから、なおさら楽しみだ。

 さて、ケンシロウを含めた北斗神拳伝承者候補「北斗四兄弟」だが、いつしか「北斗三兄弟」と呼ばれるようになり、ともすればその存在すら抹消されかねなかったジャギ。作中での出番は多くないにもかかわらず、今なお根強い人気を誇るキャラクターである。

 その人気の理由は、弟が伝承者に選ばれたことへの劣等感、そしてヘルメットなしでは生活できないほど醜く歪んだ素顔からくるケンシロウへの憎悪。そして、その感情から生まれた数々の名言にあるだろう。

 ジャギはケンシロウに復讐を果たすため、人知れず必死の努力を重ねてきたことは想像に難くない。そこで、原作では嫌われ者だった三男・ジャギの涙ぐましい努力を振り返ってみよう。

 

※本記事には作品の内容を含みます

 

■激痛に耐えて胸に7つの傷を刻む…偽ケンシロウを演じる役者魂

 かつてジャギはケンシロウに北斗神拳伝承者の座を辞退するように迫るも、実力差は歴然。見事なまでに返り討ちに遭い、その際に秘孔を突かれて頭部が醜く変形してしまう。それを隠すため、彼は常にヘルメットを着用しており、その素顔を知る者は少ない。

 復讐のため、ジャギはケンシロウのトレードマークである胸の7つの傷を自らにも刻み、“偽物のケンシロウ”として悪行の限りを尽くす。そのたび、部下を使って“このお方はケンシロウさまだ”と吹聴させ、世間に悪評を広めていった。“胸に7つの傷を持つ男”をこの世の救世主と信じていた人々にとって、その絶望感は計り知れない。

 この時ジャギは、名言の一つである「おれの名をいってみろ!!」を披露。連載当時は、なんて許せないヤツだ!と思ったものである。

 しかし、冷静に考えれば、その胸の傷は決して軽いものではない。作中でケンシロウがシンに付けられた傷も、物語終盤で青年になったバットが記憶をなくしたケンシロウの身代わりとなるため自ら刻んだ傷も、想像を絶する痛みのようであった。

 そう考えると、ジャギもまた、自らその激痛に耐えて7つもの傷を付けたのだ。そこまでして偽ケンシロウを演じようとした執念、そして、憎き相手を演じ切るという“役者魂”は半端ないと言える。歯を食いしばって我慢するジャギを想像すると……ちょっと健気に思えてしまうが。

■陰で頑張った? 南斗聖拳をマスターするほどの努力家

 ジャギはケンシロウとの直接対決で「南斗聖拳」を繰り出し、ケンシロウを驚かせている。なにせ北斗神拳と南斗聖拳という対極に位置する拳法を両方扱えるのだから、これは無敵じゃないか!と、見ていて熱くなったものである。

 思えば、彼もまた一子相伝の最強の暗殺拳・北斗神拳の伝承候補者であったほどの才能の持ち主なのだ。本気を出して取り組めば、南斗聖拳をマスターするのは不可能ではなかったのだろう。

 ジャギが南斗聖拳を誰に教わったかは明らかになってはいないが、おそらくは“打倒ケンシロウ”というただ一つの目的のため、血の滲むような修行を陰で続けていたに違いない。その姿勢は評価したいところである。とはいえ、その努力もケンシロウの前ではまったく通用せず、結果、無駄に終わってしまったのだが……。

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