■規格外の強キャラが続々登場

 しかし、単行本47巻にも及ぶ長期連載の中で、物語には新たな強者たちが次々と登場。中でもトップクラスが結城直人、美島ジュン、日向満三郎、滝沢勇人の4人だ。

 結城は小柄な美男子だが、感情をどこかに置き忘れたような冷たい目をしており、暴力に一切の迷いがない。不意打ち気味とはいえ相沢を肘打ち一発で失神させたほか、弟の京也を200キロ近くあるバイクを片手に引っ掛けたまま殴った。

 松岡とのタイマンは決着こそつかなかったが、素の状態では結城がやや優勢。怒りで覚醒した松岡にボコられる場面もあったが、一度感情が高ぶって「バグ」が発生すると手が付けられなくなり、さらにギアが一段上がることを考慮すれば、実力は上と見ることもできる。ぶっ飛んだキラーマシーンとして、作中での存在感は際立っていた。

 美島は元渋谷の最強チーマーのヘッド。鑑別所で久古明夫と兄弟の誓いを立て、出所後はヤザワを守護する存在となった。作中では松戸苦愛のNo.2近藤を倒し、椎名を一撃で沈め、さらには松岡をもワンパンでKO。地を這うようなアッパーで松岡が反転させられ、電車のつり革に足が引っ掛かった状態で白目をむいたシーンは衝撃的だった。

 また、落下してきた鉄骨を片手で受け止め、ヤザワを救出するターミネーターのようなタフさや、重傷の状態にもかかわらずチェーンでガードしていた松岡のアバラを折るなど、人外のパワーを見せつけた。

 日向は、滝沢が総長を務める千葉最大の暴走族「爆妖鬼」の特攻隊長。色黒で眉なしの容貌で、無表情かつ寡黙な性格だ。物語後半ではギャグパートを盛り上げたが、八極拳の使い手でケンカは段違いに強い。刃物や凶器を使い、非道な戦いをするキャラが多い中で、卑怯な真似をしない正統派ヤンキーだった。

 そして最後が、十二の族を束ねる「京葉狂走連合」の頭を務める滝沢だ。元松戸五人衆の中鉢竜一をたった2発で沈め、そのパンチは数多の強敵と渡り合ってきたヤザワに死を覚悟させたほど。日向と一触即発となった際にはヤザワの妨害で実現しなかったが、このドリームマッチを望む声は読者の間で多く上がった。自ら率先して戦うタイプではなかったため、人望はなかったものの強キャラであったことは間違いない。

 

 結局のところ、作中最強は誰なのか。「バグ」状態の結城もヤバいが、やはり松岡を基準にして美島が妥当ということになろうか。後に自衛隊へ入隊し、国際テロリストを圧倒するなどの活躍を見せたことも、その最強説を後押しする。

 ヤンキーが意地とプライドをぶつけ合い、そして「最弱」のヤザワが頂点に立つ。その矛盾こそが本作の最大の魅力であり、時代を超えて読者の心をつかみ続ける理由だろう。

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