■破天荒の塊? プレイヤーを選ぶADVの怪作

 続いては、ファミコン屈指のイカれたゲームとして名高い(?)アドベンチャーゲーム『東方見文録』(ナツメ/1988年発売)。

 主人公は大学生の「東方見文録(とうほうけん・ぶんろく)」で、自作したタイムマシンで敬愛するマルコ・ポーロのいる1275年にタイムスリップします。そこで出会ったマルコ・ポーロとともに、キリスト教を広める旅に出るというストーリーです。

 ゲーム中盤までは、天才的な頭脳を持ちながらも、出会った者に殴りかかる主人公・文録のバイオレンスかつ破天荒なヤバさに驚かされつつ進行。しかし物語の終盤、ジパングへと向かう流れから、本作のぶっ飛んだ展開に拍車がかかります。

 元寇に便乗して、ジパングに向かおうとする文録とマルコ。しかし神風が吹かないため、文録はタイムマシンによる力技で神風特攻隊を召喚します。これで元軍の船は全滅しますが、その攻撃によってマルコまで死んでしまうのです。

 自らが原因でマルコを死なせたにもかかわらず、あまり気にしていない文録は、やがて黄金の国「ジパング」へとたどり着きます。

 だが、その場所は文録の知るジパングからはかけ離れており、全能の神を自称する「テイオウ」なる謎の男に捕まってしまいます。「時の団地」に入れられた文録は、「こんなのは日本じゃない!」と叫ぶも、元の時代に戻ることはかなわず。最後は「おかーさーん、おかーさーん……」という言葉を繰り返すだけの存在になり、物語は幕を閉じるのです。

 本作のエンディングは1つしか用意されていないので回避もできず、この意味不明な結末を見た者には、得体のしれない後味の悪さだけが残ることでしょう。こういった理解不能な展開が苦手な人は、心の平穏を保つためにもプレイは控えたほうがよいかもしれません……。

■なぜ天狗? しかも頭だけ? 尖りまくったセンスと設定に脱帽…

 設定、キャラクターデザイン、いずれも尖りまくりで多くのプレイヤーを困惑させた横スクロールシューティングの怪作『暴れん坊天狗』(メルダック/1990年発売)。

 ストーリーもぶっ飛んでいて、謎の生命体「ダークシード」が発する妖気によってアメリカ合衆国の国民たちは心を失い、亡者と化してしまう。そこで日本の大和の国にいる天狗(テング)が霊力を使って作り出した「大天狗の面」をアメリカに派遣するという、まるでB級映画のような内容となっています。

 説明書の表紙には凛々しくてカッコいい天狗の全身が描かれていますが、ゲームの主人公は「天狗のお面」というシュールさ。

 お面からは目玉や唾、痰などを発射して攻撃。ステージに登場する人間キャラを倒すと「キャー!」と断末魔が響くなど、ちょっと猟奇的な雰囲気も漂います。その一方で、天狗の面がやられてしまうと「無念」とつぶやきながら画面下に沈んでいくコミカルな演出も光ります。

 極めつけは、各ステージに登場するボスたちの強烈なインパクトです。おなじみの「自由の女神」やアメリカの伝説の巨人「ポール・バニアン」、そしてラストは「エイリアン」風のボスとの決戦になります。

 東洋と西洋の「オカルト大決戦」ともいえるカオスなテイストながら、グラフィックやBGMのレベルはしっかり高いというのが本作のポイント。シューティングゲームとしてのクオリティは高く、ちゃんと遊べるバカゲーということで後年になってから評価が高まった作品でもあります。


 今のゲームファンからは信じられないかもしれませんが、ファミコンの時代には「どうしてこうなった?」と言いたくなるような、前衛的な作品が時折リリースされました。その多くは万人受けする内容ではありませんが、尖り具合が突き抜けていると興味をひかれる人も少なからずいたのです。

 今回紹介した作品も「バカゲー」として一部ファンから愛されているゲームの類ではありますが、完璧ではないにせよ、どこか狂気じみた突出した部分があるからこそ、発売から何十年も経過した現在も語り継がれているのかもしれません。

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