 
    『ガンダム』シリーズは長年愛され続けていることもあって、多くのスピンオフ作品が誕生している。とくに1979年から放送された『機動戦士ガンダム』で描かれた一年戦争は、さまざまな切り口で語られてきた。
ストーリーの大まかな流れは基本的に同じながら、登場作品によって行く末やその最期が変わってしまった人物もいる。ジオン公国軍突撃機動軍の司令官キシリア・ザビの配下で、地球侵攻作戦では資源採掘地帯オデッサの基地司令を務めた「マ・クベ」もそのひとりだ。
マ・クベといえば、専用に開発されたモビルスーツ「ギャン」で戦うテレビアニメでの姿が印象的だが、作品によってはモビルスーツに乗る姿すら描かれないケースも存在する。作品ごとに結末が大きく異なる、「マ・クベの最期」に焦点を当てて見比べていきたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■ガンダムと一騎打ちをして華々しく散ったテレビアニメ版
マ・クベの最期として多くのファンの記憶に残っているのは、やはりギャンに乗り、アムロ・レイの乗るガンダムに一騎打ちを挑んだ「テレビアニメ版」だろう。
一年戦争の終盤、ソロモン要塞を巡る攻防でジオン軍が敗北した後、マ・クベはテキサスコロニー周辺の暗礁空域で、追撃してきたブライト・ノアが艦長を務めるホワイトベースを迎え撃つ。
知略に長けたマ・クベは、リック・ドムの部隊にガンダムをテキサスエリアまで誘導させると、ギャンに乗って奇襲を仕掛ける。コロニー内部に用意していたトラップや空中にばら撒いた小型爆弾などでアムロを翻弄した。
マ・クベが手段を問わず功を立てようとした背景には、彼が忠誠を誓うキシリアが重用し始めていた「赤い彗星」シャア・アズナブルへの対抗心があった。何としてでも自分の手でガンダムを倒したかったマ・クベは、新型モビルスーツ「ゲルググ」で援軍に来たシャアの手助けを断っている。
アムロのガンダムに挑んだマ・クベは善戦するも、最後はビームサーベルの二刀流で機体を斬り裂かれて戦死。死の間際には、キシリアに白磁の壺を献上するよう副官のウラガンに託すセリフを残している。「あれは、いいものだ!」という最後の声が印象に残っているファンも多いはずだ。
■過酷な一年戦争を生き抜いた…!?
1981年から1982年にかけて公開された『劇場版ガンダム三部作』は、テレビアニメの全43話を再編集したものだ。尺の関係もあってマ・クベの登場シーンの多くがカットされ、彼が搭乗してガンダムと戦ったモビルアーマー「アッザム」やモビルスーツ「ギャン」も出てこない。
その2作目の映画『機動戦士ガンダムII 哀・戦士編』においてマ・クベは、オデッサの司令官として登場。ここでの彼の行動の多くは割愛されており、地球連邦軍の侵攻を受けて旗色が悪くなると脱出する描写がある。
そして、映画『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』においては、宇宙要塞ソロモンへの救援に向かう途中、要塞を脱出してきたドズル・ザビの妻子ゼナとミネバを救出。その後、シャアが地球連邦に奪われた宇宙要塞ソロモンへの襲撃の戦果をキシリアに報告するシーンで、マ・クベの姿も確認できた。
このときキシリアの傍に控えていた場面が、マ・クベにとって「劇場版」最後の登場シーンであり、この映画作品ではマ・クベは最後まで生存したことになる。

 
          
