■チーム戦で仲間を応援する姿も

 100年に一度の武術トーナメント「大擂台賽」で、勇次郎は生まれて初めてのチーム戦を経験する。そのきっかけは、郭海皇から中国連合と日米連合の試合を提案されたことだ。勇次郎なら全部ひとりで片付けると言ってもおかしくないが、意外にもその誘いに乗った。

 試合が始まると、勇次郎は同じチームの仲間を応援し、勝利を喜ぶ姿を見せる。ビスケット・オリバが龍書文と対戦した際には、オリバが書文のスタイルに合わせて戦うことにしびれを切らし、「競うな」「持ち味をイカせッッ」と助言までしていた。その様子、結構楽しそうである。

 さらに、息子の刃牙が郭春成を瞬殺した際には、ハイタッチでその勝利を称えていた。この一戦は「最強の父親を持つ息子同士の対決」でもあったので、我が子の勝利が純粋に嬉しかったのだろう。

■独歩と酒を飲み交わす…

 かつて死闘を繰り広げた愚地独歩とは、和やか(?)に酒を飲み交わす場面もあった。愚地克巳がピクルと戦った後、独歩が勇次郎を飲みに誘ったことで実現した一幕だ。

 独歩は、勇次郎が以前息子・克巳にかけた言葉への礼を言うが、勇次郎は不機嫌な様子を見せる。その理由は、ピクル戦を観戦していた独歩の態度にあった。彼が武道家ではなく、ひとりの父親として息子を見守っていたことに腹を立てていたのである。

 そのことは独歩も認めており、「甘きに傾きすぎた…」と猛省している。弟子たちには親兄弟でも手加減をするなと指導していたのに、自らがその言葉に背いてしまったからだ。

 それを聞いた勇次郎は「全部言われちまった」と返し、それ以上は追求しなかった。自ら過ちを認めた独歩の言葉を受けとめた勇次郎の姿には、人間的なあたたかみすら感じられた。

 飲んだ後、2人が肩を並べて歩く様子は、まるで旧知の友人同士のようだ。自分に臆することなく対等な立場で話せる独歩だからこそ、勇次郎も心を許しているのかもしれない。

 

 『グラップラー刃牙』の序盤しか知らない人にとっては、範馬勇次郎は凶悪で凶暴なイメージが強いかもしれない。しかし物語が続いていく中で、意外と人間的な一面が掘り下げられていった。そうした一面が垣間見えるシーンは、『刃牙』という物語の中の見どころのひとつといえるだろう。

 「地上最強の生物」と呼ばれる化物じみた存在だからこそ、少しでも人間らしい姿を見せてくれると、そのギャップが読者の胸に刺さるのである。

 

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「刃牙道 1」 (少年チャンピオン・コミックス)
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