■泣いて怒って悟って…竹内涼真さんの演技が光る名場面も
勝男と別れて以来、雰囲気を変えて新たな自分、新たな恋へと突き進んでいく鮎美に対し、勝男は未練を引きずったままだった。
その一方で周囲の声に耳を傾ける柔軟性は強まり、料理への向き合い方も真摯になっている。あんなにモラハラ発言ばかりしていたのに、おでんの味にこだわって丁寧に料理をする男になるとは想像もしていなかった展開だ。
TVerでもランキング1位となっている第3話では、勝男の内面の変化により深く光が当てられる。
前回のラストに鮎美が酒屋店員のミナト(青木柚さん)と抱き合っているところを目撃した勝男は、傷心のままマッチングアプリに挑戦。そこで中条あやみさん演じる柏倉椿と出会う。
椿はこれまでの勝男の世界にはいなかったタイプだ。サバサバしていて、仕事も恋も自分で掴みにいく肉食系の社長で、おっとりした鮎美とは正反対の存在である。初デートは圧倒された勝男だが、流れでおうちデートをすることに。ところがここで、椿のデリカシーのなさが露わになる。
勝男が丹精込めて仕込んだおでんに「コンビニくらい美味しいけど料亭には勝てない」と言ってみたり「ワインがないなんて」と文句を言ってみたりと、引っかかる言葉の連発だったのである。
そのたびに勝男は「こいつ……」と心で連発しながらも笑顔で大人の対応。このときの怒りと笑顔のギャップが上手くて笑ってしまったが、次第に二人はヒートアップし口論に発展してしまった。
そして、その中で勝男は気づく。椿の自分への態度は、鮎美に対するかつての自分と同じものだということに。衝撃を受けた勝男は、自身を諭すように「椿は俺だ。鮎美が見てた俺の姿だ」と目を潤ませ、過去の自分を思い起こす。そして、「作った人の気持ちも考えないで……」と鮎美を想ってポロポロと涙を流した。
ここでの竹内さんの演技は圧巻だった。感情的になることもなく、ただ目の奥を潤ませ思い詰めたような表情を見せるその姿からは、自身の行動を後悔する気持ちがとてつもなく伝わってくる。
愛する鮎美の痛みを追体験したこの瞬間、かつての亭主関白男子・勝男の価値観は崩れ去った。人前で自分の未熟さを受け止めて涙とともに感情をさらけ出すことは、簡単なようでそうそうできることではない。
そんな素直さと根っこにある彼の優しさが、「応援したくなる」という声に繋がったのかもしれない。現実でも起こりうる問題だからこそ、グッときたという人も多いのだろう。
勝男の告白を聞いた椿は、泣きじゃくる彼を励まして2人は性別を超えた友人となるが、この中条さんの椿役もハマり役である。美しい顔立ちの彼女がメソメソする勝男に「飲もうぜ!!」と誘う様子は、男前すぎて惚れてしまいそうだ。竹内さんと中条さんといえば、『君と世界の終わる日に』やCMでも共演しており、息がぴったり。2人の掛け合いは、これからの物語にもいい流れを生み出してくれるはずだ。
勝男が気づきを得た裏では、鮎美がミナトに電撃告白しカップルになっている。しかもそれを直接勝男に報告するものだから、勝男の心はズタズタだ。一方で、視聴者の間で以前からミナトの近すぎる距離感を心配する声もあったが、その不安が現実になっていくような兆しも見え始めている。すべてを知った勝男が次回、鮎美とどう向き合っていくのか、彼の行動から目が離せない。


