10月7日より放送中の竹内涼真さんと夏帆さんがW主演を務めるドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(TBS系、火曜22時)。TVerとTBS FREEでの総再生回数は10月14日の時点で火曜ドラマ史上最多となる365万回を突破。同じくTBSの大ヒットドラマ『VIVANT』にも匹敵する最高ペースで躍進を遂げている。
谷口菜津子さんの同名漫画を原作とした本作は、竹内涼真さん演じる亭主関白思考の海老原勝男が、夏帆さん演じる恋人・山岸鮎美に振られるところから始まる逆再生ラブストーリーだ。
第1話から勝男の「モラハラ」な言動が注目を集め、Xでは関連ワードがトレンド入りしたが、放送された第3話までの間に、彼の“謎の自信”と“ナチュラルな無神経さ”には変化が見え始めており、「勝男を応援したくなる」といった声まで上がっている。
嫌われものの主人公のはずが、どこで視聴者から好感を集めるのか。今回は第3話を軸に、勝男の変化をたどりながら、その理由を探っていきたい。
※本記事は作品の内容を含みます。
■”最低男”が“応援したい男”に…勝男が見せる等身大の再生劇
第1話で描かれたのは、勝男のとんでもないモラハラぶりだった。彼から飛び出す発言は「食事は美味しい。けど全体的にちょっと茶色すぎるかな」「女なら弁当くらい作れ」「めんつゆで肉じゃがは邪道」といったあまりにも偏ったものばかり。
恋人の鮎美が相手に尽くすタイプの女性ゆえ、6年も付き合っていられたものの、SNSには多くの視聴者から「勝男ウザイ!」「もう黙って」といった声が寄せられていた。しかも彼の場合、台所は女の聖域と言わんばかりに絶対に料理をしないため、見ていてイライラが募る一方である。
さらに勝男は、条件だけでいえばハイスペ男子。自信満々な彼は職場でも、料理好きな後輩・白崎ルイ(前原瑞樹さん)や男女平等思考の南川あみな(杏花さん)に対して一方的に価値観を押し付け、呆れられてしまう。
しかも本人はそれが周囲から浮いていることにまったく気づいていないため、無神経な発言の数々も善意のつもりだったりする。そこが厄介なところであり、固執した価値観は「時代錯誤」として描かれていた。
そんな全方位を攻撃する男を、竹内さんは実に自然体で、しかも爽やかに演じている。やもすれば嫌味の化身になりそうな役柄だが、彼の屈託のない笑顔と攻撃的な言葉の相性は非常にいい。「ウザイけど嫌いになれない」という感想は、竹内さんの演技あってこそ寄せられるものだろう。
さて、視聴者を困惑させた第1話だが、そこから第3話にかけて勝男の印象は一変する。SNSでは「勝男がどんどんバージョンアップしてる」「憎めない」「見てるのが楽しい」といった声も増えていき、放送のたびにトレンド入りを果たすまでになった。
その背景には、鮎美が去ったことで自分を省みた勝男の価値観の変化がある。思いのほか、柔軟な姿勢を持つ彼は、第2話で後輩のアドバイスをうけて初めて台所にたち、大好物の”鮎美が作る筑前煮”を再現しようと奮闘。
難しさを実感したことで初めて鮎美の努力を知り、さらにはめんつゆの材料を調べ自身の無知さを恥じるとめんつゆをベースにしたそうめん弁当を作り、「あり得ない」と馬鹿にしていた男同士の弁当交換までしたのである。
料理を通じて新たな発見をするたびに嬉しそうな表情を見せ、作る過程に苦労しながらもキラキラした顔で一生懸命に目の前のことに向き合う。これまでの凝り固まった価値観を自分の力でうち破っていくその姿こそが、見る者の心を掴むのだ。


