ガンダムを代表するもう一人の「シン」…ドズルが信頼を寄せたエースパイロット「シン・マツナガ」の生涯の画像
ガンプラ「HGUC 1/144 MS-06R-1A シン・マツナガ専用ザクII」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

 バンダイが運営するプラモデル情報総合サイト「バンダイホビーサイト」に、エース・パイロットログというページがある。そこではガンダムシリーズの舞台である宇宙世紀に目覚ましい戦果を挙げたエースパイロットたちが紹介され、その活躍や愛機についての記録が公開されている。

 その中にいる1人が「シン・マツナガ」。「白狼」の異名でも知られるジオン公国軍のパイロットで、ガンダム作品におけるエースとしては「真紅の稲妻」ことジョニー・ライデンと並ぶほど歴史は古い。

 ガンダム作品で「シン」といえば、テレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の主人公「シン・アスカ」を思い浮かべる人も多そうだが、往年のガンダムファンにとっては「シン・マツナガ」のほうがなじみ深いかもしれない。

 そのシン・マツナガの専用機は1983年に早くもガンプラ(MSV)化されているが、彼がどのような人物なのか詳しく知らない人も多いはず。そこでアニメでは描かれていないシン・マツナガの活躍について振り返ってみたい。

※本記事には各作品の内容を含みます。

■両軍から畏怖された「白狼」が成し遂げたこと

 ジオン公国軍に所属するシン・マツナガ。彼は「白狼」もしくは「ソロモンの白狼」という異名で呼ばれている。彼の名の初出はメカニックデザイン企画「MSV(モビルスーツバリエーション)」で、真っ白に塗装された「シン・マツナガザクII」が生まれた。

 これは彼が白いパーソナルカラーで塗られた機体を愛用し、その乗機に白い狼のマークが描かれていたことに由来する。

 書籍『機動戦士ガンダム 戦略戦術大図鑑』(バンダイ)の記述によれば、一年戦争時のシンのMS撃墜数は141機で、ジオン軍全体では第5位の撃墜数を誇る。ちなみにアムロ・レイのMS撃墜数は142機とされている。

 シンはジオン本国・サイド3の名門「マツナガ家」の出身で、一年戦争開戦直後からドズル・ザビの指揮する宇宙攻撃軍に所属。ドズルの懐刀として頭角を現し、前線を視察する際は必ずシンが護衛を務めたほど信頼されていた人物である。

 なお、同書籍に掲載されたシンのイラストは黒髪の美少年として描かれていた。近年の作品に登場するシンは、ひげを生やした武骨な姿をしており、現在はこちらのイメージのほうで定着している。

 シン・マツナガはMSV出身のキャラクターゆえに映像作品に登場することもなく、どのような人物なのか長らく謎に包まれていた。

 しかし、近年発売された虎哉孝征氏の描くコミック『機動戦士ガンダム MSV-R 宇宙世紀英雄伝説 虹霓(こうげい)のシン・マツナガ』(KADOKAWA)では、彼の活躍やパーソナルな部分が掘り下げられた。

 同作によればシンとドズルは幼なじみという関係で、シンにとってドズルは尊敬する兄のような存在でもあった。もともとマツナガ家は軍人ではなく政治家の家系だったが、シンはドズルとともに戦うため、家族の反対を押し切って軍に志願する。この頃のシンはひげを生やしておらず、実年齢の24歳と比較しても幼く見えた。

 その後、シンは「ブリティッシュ作戦」や「ルウム戦役」などで活躍。ドズルから直接「気高さと恐怖を合わせ持つ“虹霓の白狼”になれ」と檄を受け、白いパーソナルカラーの機体と白狼のパーソナルマークを使いはじめる。

 そして、やがてソロモン要塞の守備隊長を務めることに。だが本来の彼は芸術と音楽を愛し、心の中では戦いを嫌って戦争の早期終結を願っていた。そのため、同じソロモンに所属した生粋の軍人「アナベル・ガトー」とは反りが合わない場面も描かれている。

 とはいえ、シンはガトーと連携して地球連邦軍を撃退する場面も多く、このあたりからシンはひげを生やし、髪をオールバックにして、近年よく知られる見た目に近づいている。

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