『機動戦士ガンダム』は、「モビルスーツ」と呼ばれる人型機動兵器の誕生をきっかけに物語が大きく動き出した。戦いの中でモビルスーツは進化を遂げ、その流れで局地戦を想定した強力な機動兵器「モビルアーマー」が生み出される。
『機動戦士ガンダム』を代表するモビルアーマーといえば、ドズル・ザビが乗ったビグ・ザムの活躍が印象的だ。連邦の主力艦隊に突撃したビグ・ザムの猛威を目の当たりにしたアムロ・レイが「あ、圧倒的だ……」と衝撃を受けたほどである。
モビルアーマーの多くは人型からかけ離れたフォルムをしていて、モビルスーツをはるかに上回る巨体を持つ。その分、重装備で、攻撃面も防御面も優れているのが特長といえる。
基本的には、量産機をなぎ倒すほどの高性能を誇るモビルアーマーだが、中には本来の実力を発揮できないまま散っていった機体も存在する。ここでは、そんな残念すぎる末路をたどった、悲しいモビルアーマーたちを振り返ってみたい。
※本記事には各作品の内容を含みます。
■地球連邦の本拠地を強襲すべく開発された高性能MA
OVA作品『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』に登場したモビルアーマーが「アプサラス」だ。『第08MS小隊』は、『機動戦士ガンダム』とほぼ同時期の地球を舞台に描かれた外伝作品である。
ジオン軍技術少将ギニアス・サハリンによる「アプサラス計画」に基づいて開発が進められたアプサラスは、当時の最新技術であるミノフスキー・クラフトを搭載。これによりモビルアーマーの巨体を大気圏内で浮遊させることに成功する。
それに加えて大口径のメガ粒子砲を備え、地球連邦軍の総本部があるジャブローの上空から奇襲攻撃をしかけるという壮大な計画のカギを握るモビルアーマーだった。
開発途中のアプサラスIとアプサラスIIは、試験飛行中に敵と交戦。その結果、アプサラスIは連邦の東南アジア戦線に所属する第08MS小隊の陸戦型ガンダムの攻撃で損傷する。
さらにアプサラスIIもテスト飛行中に第08MS小隊の攻撃を受け、機体が暴走したうえに雪山に突っ込んだ。そこで機密保持のため自爆処分する羽目になる。
そんなステップを経て、ついに完成したアプサラスIIIは、高出力のメガ粒子砲で連邦軍相手に猛威を振るい、山を吹き飛ばすほどの威力を見せつける。しかし、ジム・スナイパーにミノフスキー・クラフトを撃ち抜かれ、本来の目的である連邦のジャブロー基地を襲撃することが不可能になった。
その後、連邦部隊を一掃するためにメガ粒子砲を放とうとする寸前、第08MS小隊の隊長シロー・アマダと、ギニアスの実妹アイナ・サハリンが乗ったガンダムEz8のパンチでアプサラスのコックピットを潰され、そのまま墜落して大破した。
アプサラスの活躍でサハリン家の再興を夢見ながら散ったギニアス。しかし試験飛行中の交戦やトラブルによって開発が遅れ、結局量産化の認可もおりなかった。
局地戦では圧倒的な強さを見せるも大局には何の影響も与えられず、期待外れの最期だったといわざるを得ない悲しい高性能機である。


