『リトルナイトメア』や『リトルナイトメア2』を手がけたスウェーデンのゲームスタジオ「Tarsier Studios」によるホラーアドベンチャーゲーム 『REANIMAL(リアニマル)』。
その体験版が2025年10月13日からSteamにて無料配信中だが、すでにウィッシュリストの登録数が100万件を突破。さらに体験版の公開期間が無期限に延長され、プレイヤーのフィードバックを反映させた体験版のアップデートも行われることが発表された。
同作は全世界で累計販売本数2000万本を記録した『リトルナイトメア』シリーズを産んだスタジオによる完全新作。どのような仕上がりになっているのか、楽しみにしていたファンは多いだろう。
気になる体験版では、水上に浮かぶボートを操作し、かつてのホームである孤島に上陸するところから、追跡者の初遭遇までをプレイできる。カメラと環境音設計により不安や焦燥を持続させつつ、二人の孤児のふるまいに微かな“希望”を感じさせるものとなっている、導線の迷いを抑える編集が利いており、短尺ながらも恐怖とテンポの良さを両立させる手触りが際立っていた。
■カメラワークと導線設計
本作は被り物をした少年と、ウサギのようなお面をかぶった少女の二人が主人公。床下へ進むための蓋を開けたり、スイッチを操作したりと、協力プレイによって攻略を進めていくのが基本だが、画面分割などは行わず、一つのフレームに常に二人を収める「共有カメラ」を導入しているところがポイントだろう。
この「共有カメラ」により、見せたい情報へ視線が誘導され、たとえば角を曲がる刹那にハシゴや隙間が画面へ滑り込み、自然に進行方向を理解できる。それにより視野は意図的に狭められ、見えにくい部分への想像力を掻き立てて、恐怖が生まれる。怖さを増幅しながらも行き詰まることを抑えるという難題を、演出とカメラワークによって見事に解決しているのだ。
体験版の終盤では謎の追跡者から逃げ隠れする局面があるが、フレームの端に敵の姿や影が常に置かれており、敵の気配を視認させられることで、プレイヤーの焦燥感を煽る作りになっていた。
カメラワークは扉やハシゴなど、次に行くべきところに目が行くように動く。「どうすればいいの?どこに行けばいいの?」と思いながらやられてしまうストレスはなく、そのことで恐怖を持続的に楽しむことができた。
ホラーゲームにおいて同じところで何度もゲームオーバーになるのはテンポを悪くするだけでなく、恐怖を大きく損なうポイントになるため、「難しいが1~2回で通過できる」という絶妙な調整は見事と言えるだろう。
■姉弟の所作や友だちとの連携が残す“救い”
体験版のソロプレイでは男の子を操作できるが、『REANIMAL』公式サイトでは「ある姉弟が行方不明の友だちを助け……」と説明されている。
体験版のゲーム中では特段説明はないものの、女の子が姉、男の子が弟ということになるのだろう。弟を操作しているとき、狭い隙間から抜けるときに姉の手をそっと引く、先に扉の向こうを安全確認してから手招きする、そのような所作が幾度も挿し込まれる。
世界は薄暗く冷酷だが、二人の気遣いは一貫して優しい。優しい二人に優しくない世界という対比が、恐怖だけでは終わらない余韻を刻む。
この二人にはなんとか幸せになってほしい。協力の設計が機械的でなく、所作として“優しさ”へと落とし込まれている。助ける=進む=生き延びるの一致が、テーマである「Horror with Hope」を体現しており、体験版ラストでその一部を実感できた。
また、行方不明の“友だち”とは、わりと序盤に遭遇し、追跡者からは一緒に逃げるシーンも体験できる。このときはちょうどハシゴに視線が誘導されているため、意外と気づかないかもしれないが、友だちがドアを閉めて追跡者の腕を挟んで時間を稼いでいる。そのようなNPCの細やかな動きにも作りの丁寧さを感じた。
製品版でも当然似たようなシチュエーションが多く用意されていることだろう。逃げながらもNPCの動きに目を配ることができれば、いろいろな発見があって面白いかもしれない。


